2019 W杯・備忘録 127
〜 IRE 〜
IREは強い、現時点では。4年前もこの時期は強く、一時期WRランキング1位に昇りつめた。が、2019W杯準々決勝NZ戦で惨敗した。W杯では弱い、伝統的に(ベスト8には進出できてもベスト4になったことはない)。では、2023W杯どうなのだろうか?
昨秋のテストマッチ・今年の六か国対抗のスタッツを並べてみる。
まず、得失点。
表-1 得失点
相手 | JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO |
得点 | 60 | 29 | 53 | 29 | 24 | 57 | 32 | 26 |
失点 | 5 | 20 | 7 | 7 | 30 | 6 | 15 | 5 |
FRA戦を除いて、危なげなく勝利している。JPN戦、最多得点、しかし、突出しているわけではない…
表-2 ボール保持率(%)
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 63 | 60 | 58 | 60 | 53 | 60 | 57 | 51 |
相手 | 37 | 40 | 42 | 40 | 47 | 40 | 43 | 49 |
IRAはボールを保持し続け、パス・ラックで前進し、相手を圧倒する。
表-3 Time in Possession
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 21’43” | 22’01” | 20’04” | 22’03” | 18’39” | 22’59” | 17’11” | 20’40” |
相手 | 12’33” | 14’51” | 13’52” | 14’50” | 17’50” | 15’05” | 14’02” | 19’45” |
計 | 34’16” | 36’52” | 33’56” | 36’53” | 36’29” | 38’04” | 31’13” | 40’25” |
今年の六か国対抗15試合平均の保持時間は「38分5秒」。昨秋のシリーズは、前回のENG各試合同様、保持時間計は少ない。今年の六か国対抗でも最終戦:SCO戦以外は、あまり多くない。
表-4 Time in Opposition 22
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 5’41” | 8’11” | 6’13” | 5’51” | 1’46” | 5’19” | 3’23” | 5’37” |
相手 | 26” | 1’56” | 4’21” | 1’01” | 2’17” | 1’04” | 16” | 2’01” |
FRA戦の敗因の一つが、この時間の短さであろう。それでも、24点取っている。
表-5 地域獲得率(%)
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 68 | 65 | 51 | 57 | 49 | 65 | 61 | 53 |
相手 | 32 | 35 | 49 | 43 | 51 | 35 | 39 | 47 |
負けたFRA戦だけが50%を切っている。これも面白い事実だ。
表-6 キック比(% Possession Kicked)
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 7.4 | 5.8 | 8 | 5.7 | 11.0 | 5.2 | 6.4 | 7.5 |
相手 | 6.6 | 13.1 | 11 | 5.7 | 13.1 | 17.0 | 16.3 | 9.1 |
FRA戦だけが「10」を越えている。NZ、ITA、ENGでは相手が蹴ってきていても繋いでいる(ENG戦は15人対14人の戦いであったことの影響も大きい)。NZ戦では「付き合わず」FRA戦では「付き合った」感がある。これが事前戦略どおりなのか、気になるところだ。
表-7 パス数
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 215 | 212 | 222 | 238 | 155 | 280 | 189 | 185 |
相手 | 118 | 106 | 146 | 160 | 120 | 83 | 68 | 145 |
これまたFRA戦が最小値。NZ戦のように戦っていれば、試合内容は違っていたのだろう。
表-8 オフロード
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 17 | 2 | 13 | 6 | 7 | 10 | 11 | 5 |
相手 | 4 | 9 | 9 | 8 | 8 | 4 | 4 | 5 |
NZ戦「2」が興味深い。NZ戦、明確な戦略が感じられる。それに対して、FRA戦、いかに戦おうとしていたのだろうか?
表-9 ラック獲得数(Ruck Won)
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 112 | 132 | 121 | 120 | 82 | 118 | 87 | 102 |
相手 | 64 | 57 | 90 | 76 | 79 | 68 | 42 | 84 |
これまたFRA戦が最小値。IREの特徴はラックの高速リサイクルからの連続攻撃。それを相手に封印されたのか、自ら封印したのか、どうなのだろう。
表-10 タックル成功率(Tackle Made) (%)
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 90.4 | 81.5 | 89.0 | 92.3 | 89.3 | 89.7 | 91.5 | 85.6 |
相手 | 87.4 | 92.4 | 86.0 | 89.5 | 91.5 | 87.7 | 84.0 | 91.8 |
NZ戦「81.5」、興味深い。
表-11 ペナルティ数
JPN | NZ | ARG | WAL | FRA | ITA | ENG | SCO | |
IRE | 15(0,0) | 9(0,0) | 10(0,0) | 6(0,0) | 10(0,0) | 9(0,0) | 15(0,0) | 10(0,0) |
相手 | 13(1,0) | 10(1,0) | 13(1,1) | 14(1,0) | 7(0,0) | 8(1,1) | 8(0,1) | 15(1,0) |
(注)()内の最初数字はイエローカード、二番目の数字はレッドカードを出された数。
優等生の成績表を見ている気分になる。8試合、イエロー・レッドはゼロ。お行儀のいいチームだ。
IRE、シュミット前HC以来、「カタ」(自らのプレースタイル)⇒勝ちパターンが確立している気がする。それが強みでもあり、弱み(やることが決まり切っている・わかりやすいという意味で対応策を考えやすい)でもある。ともかく、勝率は高い。
ハンセン前NZ・HCの伝記を読んでいると、シュミット前IRE・HCについて「指導者・分析者としては卓越している」が「勝負師的要素が乏しく」「大試合になると臆する傾向にある」と評価していて興味深かった。
IRE・HC、そのシュミットが、2019W杯後、ファレルに代わり(風貌からは「勝負師」に思える)、9番(ギブソンパーク)・11番(ロウ)にNZ生まれ・育ちの好選手がレギュラーとして定着した。端的に現れているのが、オフロードの多用。攻撃力が増した気がしている。殻を破った気がしている。
2023W杯、ベスト8から先に行けないジンクスが勝るのか、それとも「悲願」のゴールへ到達するのか、どうなのだろう。
ハンセンにとってW杯とは、must win 3連戦(=決勝ラウンド3試合)を勝ち切ることだった。IREがその域に達するのはいつの日だろうか。3連勝するのには、何かが足りない気がしている。現在の戦力では、セクストンが3連戦戦い続けるのはむずかしく(年齢、脳震盪のリスクなど)、かといって、代役が出てきているわけでもない。万年優勝候補になるのだろうか…
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JPNの数値を他のチームと比較して見ているとそれほど悲観する必要はないのではないか、という気分になってくる。ともかく、世界のラグビーシーンでJPNを印象付ける続けるためには、勝負を度外視しても、ニッポンのカタ=「高速ラグビー」に磨きをかけ・究めるしか途が無い気がしている。
令和4年5月7日
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