2023年1月21日土曜日

岡島レポート・2019W杯・備忘録163

 WBC なんとなく W杯もどきの命名ですね

国内は盛り上がるのでしょうが 世界的に見たら どうなんでしょうか
 
2019W杯・備忘録163
〜  説明責任 〜
 
ラポルト仏ラグビー会長の下級審における有罪判決(会長職停止などを含む)を受けて、来週、フランス協会(以下「FFR」)「会員」による投票が行われる。FFRホームページには次のように告知されている。
 
FFRホームページ:114日プレスリリース(抄・意訳)
FFR倫理委員会の見解及びスポーツ大臣の示唆した手続きに即して、ラポルト会長は、上級審の判決が出るまでの間、ブイソン副会長を会長代行に指名する。当該事案を信任するか否かを投票にかける。投票は、12312時〜12512時までの間、電子投票で行われる。』
 
投票権を有するのは、FFR「会員」の1910のアマチュアクラブである。(注:プロクラブは会員(=投票権を有する)ではない。この点も考察に値する論点である。)
結果がどうなるのか、興味深い。2年前の会長選挙でラポルトと競い40%強の投票を得たグリルは、今回のラポルトの提案に反対し(投票では「Non(否)」と投票するよう呼び掛けている)・即座に会長選挙を実施すべきと主張している。これに対してラポルト派は、スポーツ省の指示に従ったFFR規則に基づく適正な提案であり、かつ、直前に六か国対抗・秋にはW杯自国開催を控えている現時点で、長期間を要する会長選挙を実施することは適切でないと反論している。
 
選挙になれば、思想・信条・計画などの違いが顕在化する。また、選挙結果が出れば、「分断」が数値化・可視化されるとともに、当選者に「正統性」が付加される。
何よりも説明責任を誰が果たすのかがはっきりしている。
 
日本ではこのようなことは起こらない。思想・信条・計画などの相違、それに伴う「分断」は見えない。なぜなのか? 大きな要因は、組織構築根拠・運営原理の違いにある。少なくとも選挙は行えない。なぜならば、「会員(構成員)」が存在しないから。
 
正式名称:公益財団法人日本ラグビーフットボール協会、英語名では Japan Rugby Football Union(略称:JRFU)は、国内法に基づく公益財団法人である。財団法人には「会員」が存在しない。あえて言うならば基本財産がご本尊として鎮座している。だから、組織の意思決定は、あたかも創唱宗教が経典の解釈で運営されていくように定款・前例に則してなされていく。
 
だから、非民主的だとは思わない。選挙で決めることが唯一の手段だとも考えていない。しかし、他山の石、学ぶべき点があるのも事実だ。財団から社団に変更することも一案であろうが、それはそれで問題が多々ある。
 
日本のスポーツ界もさまざまな事件・不祥事が生じており、ガバナンスという言葉が飛び交ったりもしているが、財団法人という特異な組織形態そのものに焦点を当てた議論がなされていない気がする。現時点でも「闇の中」にある東京五輪疑惑に関しても、JOCも東京五輪組織委員会も公益財団法人である。財団法人のガバナンスの在り方を深く考察する必要がある。とりわけ、今日的には説明責任の所在の明確化は喫緊の課題だと感じている。
 
閑話休題、1863年、ロンドンでFootballのルールの統一化(対外試合の増加に伴って必要性が増大した)のための会合が持たれた。そこから、Association Footballを管轄する「Football Association」とRugby Footballを管轄する「Rugby Football Union」が生まれた。一方が、Associationを名乗り、他方がUnionと称する。まるで、「元祖」と「本家」の呼称争いのように。
 
エレロ『ラグビー愛好辞典』「Football」の項の中では次のように解説されている。
『(「サッカーとラグビーの分離」という節で)学生時代はあっという間に過ぎ去ってゆく。社会人になってもプレーを続けたい卒業生たちはクラブを作り・学生時代の情熱を燃やし続けた。そうなると統一ルール(それ以前は学校ごとのルールはあったが、多くの違いが存在した)が望まれるようになる。1863年秋、あまりスポーツに関心を示していなかった全国メディアがこの問題を取り上げた。そして、ロンドンにクラブ・高校・大学の代表者を招集しての会合が開かれた。なぜか、パブリックスクールはこの呼びかけに応じなかった。その卒業生たちが中心となって会合が持たれた。議論は白熱し、各代表が自らのルールの正統性を主張した。大きな論点は、「手の使用」と「ハッキング(向う脛を蹴ること(注:当時のスクラムなどでは相手選手の向う脛を蹴ることは合法))」を認めるか否かであった。ケンブリッジの代表は、いずれにも否定的であった。議論の末、Footballには違った二つのスポーツが存在していることが明白になった。 … 数回の会合の後、「手の使用」を禁じたfootballの集団がFootaball Associationを創設した。』
『(「ラグビーがスポーツとして一人立ちする」という節で)ラグビーは19世紀初頭から各校で熱狂的に競技され根付いていたが、Football Associationが設立されると、いかなる組織にも統括されず各人のモラル・精神性に委ねられている状態が明らかになってきた。当時、ルールは各校任せ、さまざまであった。1870年代、統一ルールの必要性が増すとともにラグビーの危険性も取り沙汰されるようになった。遂に1871年、Rugby Football Unionが創設された。そしてこの時、ハッキングが禁止された。』
 
現在、二つのFootballは世界でプレーされている。その国際統括機関の会員(≒各国協会)数は次のようになっている。
 
 
アジア
アフリカ
欧州
北中米
南米
オセアニア
WR
19(8)
21(6)
37(4)
12(1)
  9(2)
11(0)
FIFA
47
56
55
41
10
13
(注)WRの()内は準会員数で外数。
 
国連の加盟国が193FIFAはそれを上回る211の会員数。WRは会員111、準会員21
 
二つのFootballの会員数(≒伝播力)の違い、それはその本質に由来しているのか、ラグビーを考える上での大切なポイントの気がしている。
 
令和5121

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