真冬 真夏があって 真春・真秋はない
まぁ そんなものかなぁ…
春が待ち遠しくなってきました
2019W杯・備忘録162
〜 予定調和 〜
「小よく大を制す」「柔よく剛を制す」、フランス人が屡々口にするダビデがゴリアテを倒す(旧約聖書)、それは単なる偶然ではない。しかし、すべての面で企画化・計画化・大型化し、それが進化・深化・必然化してきた今日、そういったことは儚い願望に過ぎないのだろうか?
大学選手権決勝、帝京が大勝・圧勝・完勝した。まさに無双の強さ。帝京の強さ、いくつも上げられそうだ。約束された勝利を危なげなく手にした。
しかし、予定調和不実現願望派からすれば、なぜ早稲田は勝てなかったのか⇒どうすれば勝てたのか?という問いを立ててみたくもなる。なかなか解は見つかりそうもないが…
同じ問いを準決勝で早稲田に敗れた京産についても立てることができよう。なんと言っても「1点差」の試合だったのだから。こちらの方は、いくつもの解がありそうだ。
決勝では、フィジカル面・メンタル面をはじめあらゆる面での差が如実に顕在化した。では、事前の戦力が試合を決めてしまうのだろうか。そうであるならば試合をする意味がない。弱者には弱者なりの戦い方があるのではないのだろうか?
負けたのは㈰失点(=点を取られ過ぎた)が㈪得点(=点を入れられなかった)を上回ったからである。
各試合のトライを少し深く見ていくと次のようになる。
トライがどのような状況で生まれたのか、次の各項目で見る。
「分」:ゲーム開始時からの時間
「P」:起点となるリスタートを導いたペナルティの有無
「起点」:ボール支配チーム:リスタートの種類
「位置」:T(帝京)・W(早稲田)ゴールラインからの距離(m)
「PH」:リスタートからトライに至るフェーズ数
「AD」:トライまでの間に出されたP・アドバンテージの数
「KR」:キックに起因するボール保持の変更回数
「TO」:ジャッカル・ノックオンなどによるボール保持の変更回数
「番号」:トライした選手の番号
表-1 決勝:勝者・帝京のトライ
分 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
T-1 | 1 | - | T:KO | ±0 | 12 | - | * | - | 10 |
T-2 | 21 | - | W:S | W35 | 15 | - | 3 | - | 6 |
T-3 | 26 | ○ | T:LO | W24 | 1 | - | - | - | 8 |
T-4 | 39 | - | W:LO | T48 | 1 | - | 1 | - | 11 |
T-5 | 46 | ○ | T:LO | W15 | 3 | - | - | - | 3 |
T-6 | 50 | - | T:S | T30 | 3 | ○ | - | - | 10 |
T-7 | 57 | - | W:S | W30 | 1 | - | - | 1 | 7 |
T-8 | 64 | ○ | T:LO | W45 | 4 | - | - | - | 19 |
T-9 | 69 | - | T:S | W35 | 11 | - | - | - | 14 |
T-10 | 74 | ○ | T:LO | W22 | 2 | (○) | - | 2 | 6 |
T-11 | 79 | - | T:KO | ±0 | 2 | - | 2 | 1 | 23 |
敗者からすれば、トライを取られ過ぎた。どのトライも阻止できなかったのだろうか?三つの視点から見てみる。
㈰トライした選手のポジション、プロップからバックスリーまで、すべてのポジションと言っても過言でないぐらい「満遍なく」トライしている。ボールキャリーも「満遍なく」どの選手もしている。そうであれば(事前に想定できていた)、早稲田から見れば、ターンオーバーするターゲットを絞ることができなかったのか。
㈪起点のリスタートの開始地点が「相手陣22m内」からは1回だけ(T-5)。早稲田から見れば、自陣22m内でのディフェンスでもっと「粘れるはず」では。接点で、常に、前に出られていた。攻撃的なタックルが決まらなかったということなのだろうが。
㈫相手(早稲田)ボールリスタート:3回、マイ(帝京)ボールキックオフ(キックオフは、基本的に相手陣に蹴りこみ・ボール支配権を相手に渡すプレー)2回、つまり、11トライのうちの半数近くは、リスタートから直接トライを取られてはいけないシチュエーション。早稲田から見れば、防ぎようがあったのではないか。
ほどほどの失点に抑えられれば、まだ「試合になった」はずだ。
表-2 決勝:敗者・早稲田のトライ
分 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
W-1 | 10 | - | W:S | T35 | 2 | ○ | - | - | 14 |
W-2 | 17 | ○ | W:LO | T15 | 1 | - | - | - | 11 |
W-3 | 78 | - | T:LO | W35 | 1 | - | - | 1 | 14 |
帝京に比べると、事前に用意したサインプレーでのトライが2回(W-1、W-2)。帝京の20失点、今シーズンの帝京の最多失点である。ということは、早稲田から見れば、よく点を取ったとも言える。さらに得点を積み上げるためには、PG、DGの精度を上げることも一つの道だろう。
表-3 準決勝:勝者・早稲田のトライ
分 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
W-1 | 25 | ○ | W:LO | K40 | 1 | - | 2 | 1 | 8 |
W-2 | 28 | - | W:S | K5 | 1 | - | - | - | 14 |
W-3 | 53 | - | W:DO | W22 | 2 | - | * | - | 9 |
W-4 | 66 | - | W:S | K30 | 9 | - | - | - | 10 |
京産から見れば、どのトライも防げたものだった。それだけに悔いが残る試合ではないだろうか。
表-4 準決勝:敗者・京産のトライ
分 | P | 起点 | 位置 | PH | AD | KR | TO | 番号 | |
K-1 | 19 | - | K:S | W20 | 1 | - | - | - | 14 |
K-2 | 41 | - | K:KO | ±0 | 12 | - | 1 | - | 5 |
K-3 | 75 | - | K:LO | W30 | 6 | - | - | - | 4 |
トライしたのは、外国人留学生3人。京産、決勝の帝京と対称的にボールキャリー・トライゲッターが限られている。京産から見れば、34分のPGを決めていれば計算上は勝てた。
KSLPFD図で見れば、次のようになる。
「分」は得点時間
大文字はWAL 小文字はAUSのボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (P*はイエロー、P**はレッド、PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
2023-01-08 帝京/早稲田 (大文字は帝京ボール)
分 | 得点 | |
1 10 17 21 26 39 | K TG k l P-l s-f-s tg K D* P-l t K s TG k S-p-L TG k l-F-S-p L l L S l P-l TG | 7- 0 7- 7 7-12 14-12 21-12 28-12 |
41 46 50 57 64 69 74 78 79 | k P-pg K s p-L T k S TG k S P-l-S-p-L-s TG k P-l-P-l P-l p-L TG k S-p-L S T k p-L TG k p-L t K TG | 28-15 33-15 40-15 47-15 54-15 59-15 66-15 66-20 73-20 |
試合の「流れ」で見ると、㈰ 17分、早稲田が逆転してからの攻防で早稲田がもう少し「粘れれば」 ㈪ 帝京、たしかに比類ない強力チームではあるけれど、この試合、ミスが多かった。そのミスを衝けない(=得点に結びつけられない)早稲田=ミスを糊塗して流れを渡さない帝京。その象徴が、35分からの一連の流れ、帝京LO(スローミス)・帝京22m外から持ち込んでのタッチキックで帝京陣22m内での早稲田のLO・帝京のPと帝京のミスが続いたのだが。この時間帯、帝京陣22m内での攻防が続いた。ここで、早稲田が得点していれば… ㈫「凌いだ」帝京、直後に反撃し、W・9のボックスキック→W・14のキャッチミスから一気にトライでハーフタイム。
Momentumを、1試合通じて、持続し続けた帝京、こんな試合滅多にない、ということは、早稲田からすればその勢いを断ち切る時間帯を作れればよかったのだろうが。
2023-01-02 早稲田/京産 (大文字は早稲田ボール)
分 | 得点 | |
8 15 19 25 29 38 | K s-p-PG* d P-l P-pg K p-L s L s-f-s p-PG k l P-l-s tg K P-l D* p-L TG k L S TG k L P-pg* D S P-pg K | 0- 3 3- 3 3-10 10-10 17-10 17-13 |
41 49 53 63 66 72 75 | k tg K s L-s P-pg K P-l-S D TG k S-p-L s-F-S P-l-S s-P-pg K l S TG k l s p-PG k l tg K p-PG* S-p | 17-20 17-23 24-23 24-26 31-26 34-26 34-33 |
京産から見れば、悔やまれるプレーがいくつもあるのだろう。記憶に残るのは、㈰22分 14番が早稲田インゴールに持ち込むも抱えられタッチダウンできずに早稲田ゴールライン・ドロップアウトに。㈪24分 やはり14番(トライもし大活躍していたのだが、ウィングになって1年目、未熟さが目立ってしまう)がタッチ際のボールを残そうとして(=自然体でタッチに出した方が結果的にはよかった)ラックになり・ターンオーバーされて早稲田のトライに。㈫52分 早稲田のドロップアウト 22mラインを跨ぐショートキックに対応できず早稲田ボールになりトライされる。などなど。こうして書いていくと早稲田の「試合巧者」ぶりが浮き出てくる気もするが、決勝を見てしまうとそれは幻想なのだろう。
今年のW杯、「小よく大を制す」試合を見たいものだ。そのために必要な条件は何なのだろうか?
JPN、2007大会では18-72でWALに敗れた。そして、2015大会、34-32でRSAを破った。2019大会では19-12でIREに勝利した。いずれも興味深い得失点だ。
令和5年1月14日
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