12月第1日曜日は 早明戦の日・年の瀬の始まりです
2019W杯・備忘録157
〜 追試 〜
先週末、ANS2022最終週、2試合が行われた。偶然なのだろうが、このシリーズのこれまでの試合で「不本意な試合」が続いた4チームが追試を受けているような気分で見ていた。そして、見事に結果が二分された。やはり勝負は勝たなければ意味がない、そういう冷徹な現実を突きつけた内容だった。AUS・RSAの南半球勢は安堵して家路につき、WAL・ENGは嘆くべき年の瀬を迎えた。
* WAL/AUS:52分:WALがトライ&ゴール=34-13でリードしたところで勝負あった、と思わせた試合。ワンサイドゲーム・ボロ勝ちしてもおかしくなかった。この時間まで1トライのAUSが残り25分で4トライを挙げて試合をひっくり返すなんて… この4トライのうち3トライ(他の1トライはペナルティトライ)は、ナウニガワタワセ(2トライ)とロナーガンがあげたもの。この二人、10月AUS-Aの一員として来日しJPN・XVと対戦している。ともかく、WAL弱くなったと印象付けられる試合結果となった。
勝負の分かれ目はいくつもあった。38分:AUSゴール前でのトライ阻止行為でAUS・9番に「イエロー」。この後、AUSゴール前のWALボールスクラムでAUS・3回連続で「P」。そもそも、イエローが出た時点で英語版解説者は「ペナルティトライ」と言っている。であるにも拘らず、その後の反則の繰り返しでも「お咎め」はなく、3回目の「P」の後にレフリーから「次やったらカード」との警告がAUSに出され、スタジアムから大ブーイング。ここで、ペナルティトライ(を取るべきだと感じている)+イエロー(これも妥当)であれば、試合は壊れて・WALのボロ勝ちになっていただろう。それにしても、WAL、ここで取り切れないのが実力、というか、弱さの象徴でもある。前半最後のスクラムから8→9でインゴールに飛び込むも抱え込まれてヘルドアップ・ハーフタイムに。
後半最初のスクラムでAUSの「P」→AUS・17番にイエロー(この時点で15人対13人に)その後、2トライ・2ゴールを挙げて、大量リードとなったのだが… WALから見て暗転したのはどのプレーだったのか。あえて一つのプレーを挙げれば、次のキックオフからの流れの「蹴りあい」でのWAL・15番のキャッチミス・ボールを後ろへそらしたことか。まさに「アリの一穴」のように、そのボールをひっかけられWALゴール前に迫られ一気に流れが変わり、AUSのトライ:34-18に。次の「転換点」は、66分:TMOでWAL・7番が「足をかけて」AUSのボールキャリアーを躓かせたことが大写しにされイエロー。そして、73分:やはりTMOでAUSの「トライか否か」を見ている過程でWAL・16番の「ゴールライン上に寝転がってモールを崩す行為」が発見され、イエロー+ペナルティトライ。恐るべしTMO!
ANS・基本形は各チーム3試合の中、AUSだけは5連戦を戦った。そして、最終戦のラスト20分で爆発して勝利した。タフなチームに成長してきている。
* ENG/RSA。策を弄さず・「素」のまま・体力比べをしたら、当然のごとく、RSAが圧勝した、そんな印象が残った。
関心のある方は、この2試合の得点経過を(参考)LSLPFD図で追っていただきたい。
これでANS2022は終了した。全21試合での各チームのスタッツを見てみると次のようになる。
表-1「% Possession Kicked」
IRE | FRA | ENG | SCO | WAL | ITA | NZ | RSA | AUS | ARG | |
㈵ | 10.0 | 11.3 | ||||||||
㈼ | 9.0 | 13.5 | 8.1 | 8.8 | 6.5 | 10.0 | 6.6 | 8.8 | 13.2 | 22.1 |
㈽ | 5.9 | 14.3 | 18.2 | 11.1 | 13.2 | 9.1 | 8.1 | 12.0 | 6.9 | 12.5 |
㈿ | 10.1 | 13.4 | 6.0 | 5.6 | 12.6 | 10.7 | 7.0 | 8.1 | 8.6 | 14.5 |
㈸ | 7.0 | 6.8 | 16.8 | 8.9 |
(注) 最左列のローマ数字は「第〇週」の意。
JPNは、「7.3(ENG㈽)」「12.5(FRA㈿)」
FRA、ARGは、どの試合でもキックを多用していた。逆に、NZは本能的にキックよりもラン・パスを選択していた。この3チームと比べると、他のチームは、毎試合、戦略を変えていた印象だ(対戦相手を見てなのか、自チームの試行錯誤の過程での選択なのか、気にはなる)。本番でどのような戦い方をするのか、秒読みに入ってきているのだろう。
このシリーズ、「50:22」を見なかった。各チーム、フルバックだけでなく複数人を自陣22m内に置くディフェンスが浸透した結果であろう。その分、ラインディフェンスが多少なりとも手薄になる。そこをどう突くのか、アタック力・構想力の見せ所になってほしい。
表-2「Total Passes」
IRE | FRA | ENG | SCO | WAL | ITA | NZ | RSA | AUS | ARG | |
㈵ | 121 | 109 | ||||||||
㈼ | 130 | 124 | 163 | 139 | 136 | 130 | 128 | 124 | 113 | 60 |
㈽ | 200 | 72 | 100 | 125 | 139 | 111 | 163 | 93 | 131 | 155 |
㈿ | 138 | 156 | 147 | 173 | 148 | 110 | 106 | 167 | 172 | 81 |
㈸ | 110 | 153 | 65 | 132 |
JPNは、「201」「146」
興味深いのは、㈽:FRA「72」vsRSA「93」の試合。本番の一つの基準になるのかもしれない。同じ㈽のIRE「200」は、FIJ「107」戦での数値。
表-3「Rucks Won」
IRE | FRA | ENG | SCO | WAL | ITA | NZ | RSA | AUS | ARG | |
㈵ | 85 | 63 | ||||||||
㈼ | 75 | 91 | 88 | 66 | 94 | 63 | 113 | 93 | 62 | 38 |
㈽ | 85 | 54 | 50 | 68 | 68 | 52 | 95 | 61 | 79 | 98 |
㈿ | 72 | 92 | 99 | 88 | 67 | 54 | 62 | 73 | 106 | 78 |
㈸ | 58 | 81 | 46 | 66 |
JPNは、「104」「56」
興味深いのは、㈸:ENG「58」vsRSA「46」。奇しくも、両チーム合わせたものが、㈽・JPN(対ENG戦)のと同数となっている。
(参考)
2022-11-26 WAL/AUS KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字はWAL 小文字はAUSのボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ (P*はイエロー、P**はレッド、PG*はPGを狙って外したもの)
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
分 | 得点 | |
k s-P-pg K S-p-L s L TG k S l P-pg K L p-PG k l-S TG k P p-L p-PG k L P-l-P-l-tg K L p*-S-p-S-p-S-p-S | 3 9 14 18 22 27 33 | 0- 3 7- 3 7- 6 10- 6 17- 6 20-6 20-13 |
K P-pg* l S-p*-L-p-L-TG k p-L p-L TG k F s-P-s t K l s l S L s l P*-l tg K s P-l-pt P* K S-P-l tg K p-L | 46 52 57 67 73 78 | 27-13 34-13 34-18 34-25 34-32 34-39 |
2022-11-26 ENG/RSA KSLPFD図
「分」は得点時間
大文字はENG 小文字はRSAのボール支配
分 | 得点 | |
K L s-f-s-P-pg* D p-L p=PG* d f S-p-PG k s l P-pg K L p-PG* d l-P-l-P-l D* s-F L s dg K t K s P-l P-pg K | 12 18 30 32 39 | 3- 0 3- 3 3- 6 3-11 3-14 |
k dg K S-f p-PG k P-l P*-l tg K S-P-l S s-P-pg K p**-L s p-L-p-L P-l s-P-l p TG k s s d* p-L p-L-s S P | 41 46 49 57 71 | 3-17 6-17 6-24 6-27 13-27 |
60分:RSA・18番が交代早々レッドカード、以降20分間、ENGが数的優位に立ったが、有効に使えていなかった。
30分・41分のRSAのドロップゴール、まさに「本番仕様」。今回のANS21試合で、ドロップゴールを決めたのは、ENG/NZでのNZの1本とこの試合の2本のみ。試みて外したのは、ENG/ARGでのARGの1本のみ。こうしてみると、ENGと戦うために必須の「飛び道具」なのだろうか…
令和4年12月3日
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