2019 W杯・備忘録 160
〜 縁 or 運 or ? 〜
2011・2015W杯の優勝キャプテン・マコー(NZ)の自伝を読んで強く印象に残り続けているのが次の部分である。
『ワールドカップが近づくとNZのテレビは、やたらと鼓舞するような番組が多くなる。1987年、イーデン・パークのかつてのメインスタンドで、目の前で声援を送る群衆とともに、キャプテンのデヴィッド・カークはウェッブ・エリス・カップを高々と掲げた。僕はそのイメージが大好きだ。 …
けれども僕が1987年の映像を見るとき、ちょっと気になるシーンがある。デヴィッド・カークが空高くカップを掲げているとき、もともとのキャプテンであった“忘れられた男”アンディー・ボルトンが来て、カップをつかむ瞬間である。ダルトンはどことなく所在なげな感じで、なぜなら彼は大会前に大怪我をして、1分たりともプレーすることができなかったからだ。僕の足が痛くなると、いつもこのイメージが頭に浮かんでくる。それは僕じゃない。』(『突破!リッチー・マコー自伝』(リッチー・マコー[著]グレッグ・マクギー[著]斎藤健仁/野辺優子[訳] 東邦出版 2016年 p314)
このダルトンのイメージが、以後、W杯で優勝するまで怪我をするたびに繰り返し出てくる(p322、p330、p332、p335)。
ラグビーに「怪我」は付き物、祈っても・お祓いをしても・沐浴斎戒しても、どこまでも付き纏う!?
先日終了したサッカーW杯を見ていて、ベンゼマ(FRA)のことを屡々思い出した。2010年夏前・サッカーW杯南アフリカ大会直前、パリの書店にはベンゼマ関連の本が何冊も平積みされていた。しかし、あの大会では、監督に嫌われて選ばれなかった。2014年ブラジル大会では選ばれて得点を重ねるもチームは早々に敗退した。2018年ロシア大会の時は奇妙な事件に巻き込まれて代表チームから追放されていた。今大会前にバロンドールに選ばれ、今回こそと期待されていたが、怪我で出場できなかった。つくづく、W杯に嫌われている。
サッカー界の年間最優秀選手に贈られるバロンドールに選ばれたのは、2008年・クリスチァーノ・ロナウド以降、メッシ(2009〜2012)、クリロナ(2013、2014)、メッシ(2015)、クリロナ(2016、2017)モドリッチ(2018)、メッシ(2019、2021)(注:2020はコロナでなし)ときて、今年ベンゼマに贈られた。
W杯に「縁遠い」選手だと思わざるを得ない。メッシが生まれたのが1987年6月24日、ベンゼマが1987年12月19日、日本流で考えれば、「同学年」の選手である。
メッシ、サッカーの神様に愛され、W杯にも愛された。二人の違いは、「日頃の心がけ」なのだろうか、「運」なのだろうか、それとも「たまたま」なのだろうか。
運のない選手は忘れ去られてゆく。勝てば官軍、勝者だけが記憶に残り・語り継がれてゆく。
2019ラグビーW杯では、2015大会に出場し・その後大怪我をし・復帰したポラード(RSA)、オリヴォン(FRA)が活躍した。この二人、大会後、再び大怪我をして、最近復帰してきた。こういうのも、「持って生まれた」ものなのだろうか、W杯との関係性、それとも巡り合わせなのだろうか。2023W杯でもピッチ上の勇姿を見たいものだ。
あの大会、初戦でワトソン(SCO)が怪我をし・離脱、これはJPNにとって大きかった。2019大会、離脱・追加召集選手の数をベスト8のチームで見ていくと、RSA(2名)、ENG(1名)、NZ(1名)、WAL(0)、JPN(0)、AUS(0)、IRE(2名)、FRA(4名)であった。
怪我を恐れていてはいいプレーはできない。だからと言って、すべて「不可抗力」でもなさそうだ。怪我をどうマネージメントするのかもチームスタッフの重要事項となっている。脳震盪に対する扱いも厳格になってきた。来年のW杯、主力選手に不測の事態が起きることも当然ありうる。それがどのチームを見舞うのか、そして、それに打ち勝つのどのチームなのか。予測不能だからこそ面白い、ドラマが生まれる。
サッカーW杯は、大会前のFIFAランキングどおりの結果とはならなかった。来年のラグビーW杯は、どうなるのだろうか。現在1位のIRE、優勝の芽はなさそうな…
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12月19日付けのMidolにエディー・ジョーンズのロングインタビューが掲載された。その中で次のようなことを語っている。
(いつ契約解除となることを知ったのか?という問いに対して)先月NZ戦の直前に協会幹部とミーティングをした時だ。奇妙な雰囲気だった…それまでと違った態度で私に接してきた…メディアの批判もどんどん激しくなった。その時、完了が近いと悟った。
(来年のW杯フランス大会で優勝する計画はあったのか?)もちろん、優勝するためには、二つの違ったタイプのラグビーを行わなければならない:予選プールでは「攻撃的なラグビー」出来るだけ多くの得点を重ね確信を得ること;決勝ラウンドに入ったら、より確実に、スプリングボックスのように戦わなければならない、つまりブレイクダウンを完璧に支配し、効果的なキックを使い、アグレッシブなディフェンスをする。この二つのタイプのラグビーを落とし込んできた。近年、伝統的なイングランドラグビーでは勝てなくなった、つまりモールで押し込み・キックによる陣地獲得だけではね。歴史の皮肉なのだろうが、フランス代表は歴史的にダイナミックな展開ラグビーを志向してきた、それが今のチームは必要な時には、イングランド風のプレーもするようになってきた。ガルティエHCの手腕だね。
令和4年12月24日
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