2019年12月8日日曜日

岡島さんの 2019 W ・備忘録 7

~ WALES ~
                                                     2019W杯・備忘録7
WALESは負けない。強いからなのだろうか?
 今大会、トライ数が少ないチームが勝利したのは、45試合中5試合。
M10  URG3T) 30   27 FIJ5T
M14  JPN1T)  19 - 12 IRE2T
M17  WAL2T) 29 - 25 AUS3T
M28  FRA2T) 23 - 21 TON3T
M43  WAL2T) 20 - 19 FRA3T
 5試合中2試合がWAL。接戦に負けない。なぜだろうか?
あらためて、M17 WAL vs AUSをじっくり見返す。
前半はWAL、後半はAUSの試合。得点経過・結果だけをみれば、そうなる。前半23-8、大量リードで折り返して、最終的に29-25で勝った。前半の大量リードを守りきる。確かにそうだ。でも、後半のAUSの猛攻、どうして17点だけで止められたのか?
 この試合のスタッツを見ると、やはり、キャプテン・アラン・ウィン・ジョーンズのタックル数に目が行く。
 負けない理由① : キャプテンが80分ピッチにいて、ピンチの時に体を張り続ける
 今大会でのジョーンズの主要スタッツは次の通り。出場試合すべて80分出ていることは、ロックというポジションからしてすごい。そして、ピンチの時に必ず画面に映る!

 ①
 ②
 ③
 ④
 ⑤
 ⑥
 ⑦
vs GEO
  80
    6
    5
    6
    2
   75
    2

vs AUS
  80
    4
    -
   25
    3
   89
    -
vs FIJ
  80
    1
    1
   16
    2
   89
    -
vs FRA
  80
    6
    2
   15
    -
  100
    -
vs RSA
  80
    2
    -
    8
    -
  100
    -
(注)①出場時間(分) ②ランメーター ③ラインアウト・キャッチ ④タックル ⑤タックルミス ⑥タックル成功率 ⑦ラインアウト・スチール
 WALのキャプテンは、ジョーンズ(1985年生)より年下のウォ―バートン(1988年生)だった。ウォ―バートンがケガのため現役引退したことによる「代役」めいたものもあるけれど、こういうのも巡り合わせということか。ウォ―バートンのケガがなければ、ジョーンズは黙々とロックの役目を果たして、WALは、より強くなっていたのだろうか?
 後半3分、まずWALDG3点追加。26-8。それでAUSに火がついたのか、6TG26-1511分、AUSWALゴール前で12フェーズ重ねるもノックオンで無得点。
16分、WAL・ノットロールアウェイでPAUS・タッチに蹴出してWALゴール前ラインアウト。AUS・ラインアウトモールをWALコラプシングでPAUSPKをタッチに蹴出して再びWALゴール前ラインアウト。AUS・ラインアウトモールが崩れてフェーズを重ね、7フェーズ目でWAL・オフサイド・P。再びAUS・タッチに蹴出してWALゴール前ラインアウト。AUS・ラインアウトモールが崩れてフェーズを重ねる途中でWAL・オフサイド・Pでも「アドバンテージ」で攻撃継続、やっとTG26-22に。反則を恐れない!?
今大会、ペナルティ・トライは、6試合・7回ある。多くは、大勝した挌上チームが獲得したもの。唯一の例外が、勝者WALが敗者FIJに与えたPT
M5  ITA1PT)  47 - 22  NAM
M11 ITA1PT) 48 - 7   CAN
 M18 SCO2PT) 34 - 0  SAM
    M20 NZ1PT) 63 - 0   CAN
    M32 WAL    29 - 17  FIJ 1PT
    M39 WAL1PT) 35 - 13  URG

負けない理由② : 無駄な反則はしない。しかし、トライを阻止するためには反則も厭わない。
ガットランドのWAL
ガットランドのラグビーなのか、それとも、WALのラグビーなのか?
2007年から12年間WALの指揮を執り続けたガットランド。今春、フランスでは、ガットランドを次期HCに据えようとしたラポルト仏協会会長が地域協会会長たちに「外国人HCも可か?」というアンケートを取ったところ反対され、断念した経緯もある。
1963年生まれのガットランド。同年代には、NZHC・ハンセン(1959年生)、ENGHC・エディー・ジョーンズ(1960年生)など。この世代、ラグビー界の大分岐点・1995年のプロ化の時に現役の最終盤を迎えていた。彼らは、「ラグビーが職業足りえない」時代に選手生活を送り、「ラグビー指導が職業足りえるか?」という黎明期にコーチ(業)に踏み出している。今日のワールド・ラグビー界の絶滅危惧種?
ラグビー一筋でありながらも人生経験が豊富である。だからか、何かしらの風格がある。
最近読んだ『エディー・ジョーンズ 異端の指揮官』(マイク・コールマン著 高橋紹子訳 東洋館出版社 2019年)は実に面白かった。今大会前までのエディーの軌跡を詳しく書いた伝記本。この世代の指導者の生き様、経験値の高さ・豊かさを感じさせる。
ちなみに、ハンセンに関して、日本語のウィキペディアでは「1990年にフランスのラグビークラブ「ラ・ロッシェル」にコーチとして1年間在籍」と紹介されているが、フランス語のウィキペディアでは「1987年第1W杯の際、フランスチームの練習相手を務めた縁で、フランスの(著名なラグビージャーナリスト)サルビアックの紹介からラ・ロッシェルで1年間プレーした」とある。この時期のラ・ロッシェルのHCがジャン=ピエール・エリサルド。彼からハンセンの思い出話を聞いた記憶がある、古き良きアマチュア時代のお話を。
負けない理由③ : 理念・哲学を持ったHCが長期計画でチームビルディングする
では、ガットランド時代のWALES。負けなかったのかといったら、意外に負けている。英語のウィキペディアによると、87622分、勝率57%である。強豪国には、負け越している。AUSには3勝13敗、ENG810敗、NZ12敗、RSA5勝11敗。
それでいて今夏WRランキング1位に上り詰めている。今大会を前に勝ち癖をつけたのか。
負けないから勝ち続けるのか、勝ち続けるから負けないのか?
ジャパンはWALESから何を学ぶのか…
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 最近読んだラグビー本
* 『フィジー・セブンズの奇跡』(ベン・ライアン著 児島修訳 辰巳出版 2019年)
 この本も、今大会前に読んでいれば、もう少し違う角度からも見れたのではないかと感じさせられた好著。セブンズ、フィジーへの理解が深まる本でもある。
 * 『紫紺の誇り 明大ラグビー部に受け継がれる北島イズム』(安藤貴樹著 ベースボールマガジン社 2019年)
*『紫紺の凱歌 明大ラグビー部、再建と新時代へ』(明治大学ラグビー部著 カンゼン 2019年)
*『明治大学ラグビー部、復活への軌跡 勝者の文化を築け!監督・田中澄憲の「改革戦記」』(永田洋光著 洋泉社 2019年)
W杯後、続けざまに明治本が出版された。この冬、明治、どこまで勝ち続けるか?

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