2019年12月7日土曜日

岡島さんの 2019 W杯・備忘録 6

2019W杯・備忘録 6
M43 WAL/FRA
今大会唯一の「1点差」の試合。レッドカードが勝敗を分けた、と言われている。でも、そうなのだろうか?
ラグビーの試合における「1点差」とは? ラグビーでは、1点を得点することはできない。「1点の重み」、ラグビーの1点、それはどこから生ずるのだろうか?
19-10Fリードで迎えた後半9分、TMOで肘打ちの映像が流れ、F・5番ヴァアマイナにレッドカードが示される。ヴァアマイナは、キャプテン・ギラドに謝り、うつむき加減に歩き出す。スタンドオフ・ロペスが近寄り声をかける…
14人で勝った記憶
あの瞬間、多くのフランス人は、「あの試合」を思い出したのではないだろうか。そして、俺たちは勝てるぞ、と…
「あの試合」、2015W杯開始前から始まったフランスTOP142015/2016シーズンの決勝は、バルセロナのカンプ・ノウ(サッカーのバルサのホームグランド)に99,124人を集めて始まった。フランス国内で、サッカーのユーロが開始されたことからのバルセロナ開催。異国での決勝戦に10万人余がつめかける。
戦うは、銀河系軍団トゥーロン(以下「T」)対ラシン92(以下「R」)
いずれのチームにも2015W杯で活躍した各国有力選手ぞろい。
3-3で迎えた前半17分、R9番がT10番にスピアーズ・タックルで一発レッド、以後、R14人で戦うことに。前半14-12Tリードで折り返すも、後半早々、PGで逆転したR29-21で勝利した!
「あの試合」ピッチに立っていた選手が、この試合にも何人かいた。2番・ギラド(Tのキャプテン)、4番・ルルー(R)、6番ローレ(R)、16番・シャ(R)。そして、7番・オリボン、18番・セティアーノは、現在、T所属。
何度もM43 WAL/FRAを見返す。見るたびに新たな発見がある。
点を取られなければ負けなかったのに…
19-10Fリードでのレッドカード。このまま、守りきろう!としたのだろうか…
決勝点を奪われたシーン : Fゴール前のFボール・スクラム。 えっ、嘘だろ、と感じたのは、スクラムがスッと組まれたこと。 ここは 時間をつぶす場面ではないのか、どんな手段を採っても。 少なくとも何度も組み直すのが常道だろうに、フランスでは… Fの一列目は、①バイユ(26歳、17キャップ目) ②シャ(23歳、26C) ③セティアーノ(23歳、6C)。プロ化以前のフランスのプロップは、30歳以上と決まっていたようなものだったのに。 対するWの一列目 ①カレ(21歳、6C) ②オーウェンズ(32歳、73C) ③ルイス(23歳、22C) どちらの1番・3番も、若い+キャップ数が少ない。 違いは、2番の経験の差だったのか? だとすれば、なぜ、Fはレッドカード直後に、2番・キャプテン・ギラド(33歳、74C)を交代させたのか?
 そこに至る過程を逆戻りすると、W・ノックオン  W・ラインアウトからのフェーズ  Wボール・ラインアウト  WPKでタッチに蹴り出す  F・ラックでのペナルティ …  このペナルティ、無駄だったよな、これさえなければ…
もう少し点を取っていれば勝てたのに…
では、点を取りに行っていなかったのか!?
そんなことはない。14人になったからと言って「殻に閉じこもって」「専守防衛」「ハリネズミ化」したらいいというものじゃない。ここぞ!と言うときは 一致団結・襲い掛からなければ… Wゴール前に迫った時間帯もあったのに。
そもそも、Wは、常に15人だったかというと、前半29分、W8番のケガで急遽入った20番・モリアティがF12番にハイタックルでイエロー、10分間を14人で戦うことに。この10分間に、Fは1T・1G7点をあげ、さらにPGを狙うがポストにはじかれてしまう。この試合、F10番・ヌタマックのゴールキックは、2度ポストに当たってはじかれている。
 不動のキャプテン
 守るも攻めるもキャプテンの指揮下!? 逆境の時のキャプテンほど重要なものはない。Wには、世界中が認めるキャプテン・アラン=ウィン・ジョーンズ・5番がフルタイムで出ている(今大会、予選プールのウルグアイ戦を除いて、先発出場。三位決定戦のNZの途中交代を除いて、他の試合はすべて80分間出場している。ロックというポジションでこれだけ出続けている選手は稀有。)それに対して、Fは、大会期間中、キャプテン問題に揺れていた(ミディ・オリンピック)(たしかに、試合中の出来は、シャの方が光っていた)。この試合も、49分までは2番・ギラド、67分までは1番・ポワロ、それからは20番・ピカモールが務めた。80分間体を張り続けられる選手をキャプテンにすべき(だった)のか?
それにしても ウェールズは強い、のか?
トライ数は F・3、W・2。
W2トライは、戦術的に、あるいは、個人技で勝ち取ったものではない。
一つは、前半12分・センターライン付近のFラインアウトからFのラック、そこから出たボールをF9番から2番にパス。2番が両脇にサポートの選手を従えながら、W4番にクラッシュ。頭同士がぶつかって、F2番脳震盪、ボールをこぼす。そのボールが、W6番の前に。このボールをW6番が拾い、独走トライ、ゴールも成功。何度もスローで見返すけれど、こんなシーン、見た記憶がない。
もう一つが、先述のゴール前・相手ボール・スクラムからのもの
ともかく、トライはトライ、当たり前だけど。
 神は細部に宿る!?
1点差」の原因探しをしていくと、80分間のさまざまなプレー、23人の選手+スタンドで観戦する8人、それからHCをはじめとするスタッフ、あらゆることが気になってくる。たった1点なのか、それとも、重い1点なのか…それ以外でも、たとえば、Fの予選プールの3試合すべて南半球の主審、これによって、雑な試合運びがある程度許されてしまっていた、とか、
大会中にチームビルディングを考えていたと思われるから、予選プール対ENG戦が台風で中止になったことは本当に痛かった、とか …
ともかく、結果がすべて。
ノーサイドの笛が鳴り、Wが準決勝に駒を進めた。

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