2023年11月11日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 198

 やっと 11月らしい気候になってきました

2019 W杯・備忘録 198
〜 敗因 1 〜
 
WRのスタッツを眺めていると いろいろと気づくことがある。
スタッツは「結果」の集積でしかない、とすれば、単なる結果論でしかない。
一方 スタッツは チーム戦略・戦術 意図 意欲の具現化でもある。また、スタッツの各項目は関連性を持っている。もちろん特定のスタッツで勝敗が決まるわけではない。そうでありながら、勝者・敗者のスタッツに一定の傾向が見出せることもある。
チーム戦略が明確なIRE=「攻撃は最大の防御」・ボールを保持し続けて前進していく=スタッツの各項目に特徴的に表れてくる。 IREは、それを極め尽くして 頂点に立とうとした。そして 負けるべくして負けた。
事実上の決勝戦とも言える2試合 QF2NZ/IRE & QF4RSA/FRA と決勝戦のスタッツを中心に見ていく。
起点でもあり終点でもある「POSSESSION」、チーム力が同等と思われる対戦では、50%未満のチームが勝っている。「たまたま」ではない。
 
(表-1 POSSESSION WHOLE GAME
 
 
 QF2
NZ/IRE
 QF4
RSA/FRA
  F
RSA/NZ
QF1
ARG/WAL
QF3
ENG/FIJ
  SF1
NZ/ARG
SF2
RSA/ENG
勝者
  45%
  40%
  40%
  56%
  49%
  57%
  44%
敗者
  55%
  60%
  60%
  44%
  51%
  43%
  56%
 
POSSESSION」が高いことは勝つチャンスを高めると同時にリスクも負う。
今回は、二つのリスクについて見ていく。
リスク1:「POSSESSION」↑ ⇒ PASSES↑ ⇒ HANDRING ERRORS↑ ⇒ 相手ボールスクラム↑
 
リスク2:「POSSESSION」↑ ⇒ RUCKS WON↑ ⇒ TURNOVERS
 
(表-2 PASSES
 
 
 QF2
NZ/IRE
 QF4
RSA/FRA
  F
RSA/NZ
QF1
ARG/WAL
QF3
ENG/FIJ
  SF1
NZ/ARG
SF2
RSA/ENG
勝者
  137
   82
   84
  142
  123
  214
   67
敗者
  325
  156
  221
  144
  156
  182
   78
 
「キックやランという選択肢の中からパスをする」ことと「パスせざるをえない」状況でのパス(苦し紛れのパス)は質的に違う。しかし、すべてのパスは「後ろに」投げなければならない。パスとは戦術的には一時的後退でもある。IREのパスの多さは際立っている。その精度も際立っている。しかし、リスクを増やしていることに変わりはない。
 
(-3 HANDRING ERRORS)
 
 
 QF2
NZ/IRE
 QF4
RSA/FRA
  F
RSA/NZ
QF1
ARG/WAL
QF3
ENG/FIJ
  SF1
NZ/ARG
SF2
RSA/ENG
勝者
    1
    8
    3
   10
    3
    7
    9
敗者
    8
   11
   13
   12
    8
   10
   10
 
それにしても QF2NZの「1」は驚異的だ。決勝ラウンド「一段ギアを上げた」時のすごさを感ずる。
そして そのNZが決勝では「13」。レッドが出て 数的不利の中で POSSESSIONを高めざるをえず PASSESが増え・HANDRING ERRORSも増える悪循環にはまった。
 
(表-4 SCRUMS
 
 
 QF2
NZ/IRE
 QF4
RSA/FRA
  F
RSA/NZ
QF1
ARG/WAL
QF3
ENG/FIJ
  SF1
NZ/ARG
SF2
RSA/ENG
勝者
5/5
7/8
10/11
7/7
4/5
4/4
7/8
敗者
0/0
5/9
2/2
8/10
4/6
4/4
3/7
 
もちろん、マイボール・スララム数が多いことが勝利に直結するわけではない。しかし、QF2IREの「0/0」、決勝のRSA10/11」は象徴的な数値に思える。
 
(表-5 RUCKS WON
 
 
 QF2
NZ/IRE
 QF4
RSA/FRA
  F
RSA/NZ
QF1
ARG/WAL
QF3
ENG/FIJ
  SF1
NZ/ARG
SF2
RSA/ENG
勝者
   94
   56
   56
  109
   69
  120
   52
敗者
  129
  103
  115
   58
   90
  115
   67
 
RUCKを連取し フェーズを重ねることの意味 もう少し考えてみたい。
 
(表-6 TURNOVERS WON
 
 
 QF2
NZ/IRE
 QF4
RSA/FRA
  F
RSA/NZ
QF1
ARG/WAL
QF3
ENG/FIJ
  SF1
NZ/ARG
SF2
RSA/ENG
勝者
    7
    8
    7
    7
    5
    5
    4
敗者
    4
    5
    2
    3
    7
    3
    8
 
TURNOVERS WONが多いチームが勝つ というのは 納得性がある。その観点からは QF3SF2の数値 興味深いものがある。
 
予選プールでのIRE 13-8 RSA (レフリー:オキーフ)
POSSESSION      :IRE49%   RSA51%
PASSES         :IRE129   RSA121
HANDRING ERRORS   :IRE8     RSA7
SCRUMS              IRE5/7  RSA9/11
RUCKS WON           IRE74   RSA62
TURNOVERS WON       IRE9     RSA3
 
RSA、試行錯誤を繰り返していた「跡」の気がする。この試合では、IRE的に戦おうとしていた!?
 
IRE革命とも言うべき 近年の戦術進化は 高く評価されるべきだ。しかし、「ここ一番」の試合で負け続けているのも事実だ。決勝ラウンドで「一段ギアを上げられる」チームには負ける・負けている現実を踏まえて、セクストンなきIRE どんなチームに変貌するのか 楽しみである。
 
令和51111

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