2021年8月15日日曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 89

2019W杯・備忘録 89
 LIO/RSA(2) 

 2021ライオンズRSA遠征・テストマッチ第2戦が731日に行われた。

 試合経過は次の通り。RSAの得点は「○」、失点は「」、得点を逃したのは「×」。

得点
種類
起点となった(リ)スタート

×





 4
 9
15
17
22
24
30
35

 3- 0
 3- 3
 3- 6



 6- 6


 6- 9

PG
PG
PG
PG
TMO¹
TMO²
PG
TMO³

PG
RSAのキックオフで試合開始。
LIOP(オフサイド)。RSA10PG
RSA8P(ノーバインドタックル)。LIO10PG
RSAP(オフサイド)。LIO10PG
LIOP(オフサイド)。RSA10が外す。
TMOLIO11の足払いを確認。イエローカード。
TMORSA14の危険なタックルを確認。イエローカード。
LIO15P(ノットリリース)。RSA10PG
オン・フィールド・デシジョン(以下、「OFD」)はノートライでTMO。ノートライでPに戻る。
RSA2P(ラック)。LIO10PG
×


44
50
59

70
75
76
80
11- 9


18- 9
21- 9
24- 9

27- 9
T
PG
TMO⁴
TG
PG
PG
TMO⁵
PG
RSA10のショートパントを11がキャッチしTGは外す。
RSA21P(ハンド)。LIO10が外す。
OFDはトライでTMO。トライが認められる。
RSA・9のゴロパントを13が押さえる。10G
LIOP(スクラムコラプシング)。RSA10PG
LIOP(スクラムコラプシング)。RSA10PG
RSA5LIO22に対するタックルの危険度。問題なし。
LIOP(オフサイド)。RSA10PG

 RSA2019W杯優勝時を彷彿とさせる力強さでノートライに抑えての完勝。特に、後半は完封している。

 Pについて、第1戦は次の通り。

  0-20min
 20-40min
 40-60min
 60-80min
 Total
 LIO
    4
   (2)
    3
   (2)
    -
    1
    8
   (4)
 RSA
    2
   (1)
    4
    5
   (2)
    3
   (2)
   14
   (5)
(注)下段の()内の数字は、相手チームにPGを決められた数。

 これに対して、第2戦は次の通り。

  0-20min
 20-40min
 40-60min
 60-80min
 Total
 LIO
    3
   (1)
    3
   (1)
    2
    7
   (3)
   15
   (5)
 RSA
    5
   (2)
    4
   (1)
    1
    -
   10
   (3)

 両チームの後半のPが、二試合で真逆になっている。その原因の大きなものは、フィジカル・フィットネスであろう。ただし、このシリーズ、マッチオフィシャルに対する両チームからの批判・非難が大きく影響している感がある。まさに場外乱闘
 この試合を報じたMidolの記事では、前半35分のRSA・9のLIO・9に対するタックルはレッドカードもので、これを見過ごしたことが試合を決めたとしている。それも一理。では、それ以外にミスジャッジがなかったのかというと、相当数あったことも事実。
 今回の3試合の主審を務める第1試合:ベリー(AUS)、第2試合:オキーフ(NZ)、第3試合:レイナル(FRA)は、2019W杯の予選プールで主審を務めたものの決勝ラウンドの笛は任されなかった。それぞれ、明らかなミスが取りざたされていた。オキーフは、M3:FRA/ARGM18JPN/IREの主審であった。未だ成熟途上のレフリーである。W杯後、チーム同様、各レフリーも次期大会に向けて成長する機会が必要であった。そこにコロナが発生した。彼らは彼らでコロナの影響を大きく受けている。それがこのシリーズでも如実に出ている。一口に言って、「下手な笛」、困ったものだ。
 第3戦、レイナルは、フランス人レフリーの中でも「癖のある笛を吹く」印象が強い。どんな展開になるのか、楽しみである。

**************

 マッチオフィシャルに対する批判をMidolの記事から抜き出すと次の通り。
1. ガットランドLIOHCが、第1戦の前の記者会見で、RSAのヨンカーがTMOを務めることにクレームをつける。クレームの内容は、①7月17日のLIO/RSA-A戦で、デクラークの危険なタックルを見過ごしたこと ②ヨンカーがRSA人であること。

2. 第1戦終了後、SNS上で、Jaco Johan名で、RSAに不利な判定シーンのビデオ・クリップが流される。英メディアは、エラスムスRSAHCが偽名を使って発信していると批判。

3. 729日(木)の記者会見で、エラスムスは次のように反論。
(1) ヨンカーがRSA人だからTMOにふさわしくないという批判は容認できない。
(2) Jaco Johanは、自分ではない。彼の動画はよく出来ているので見ている。
(3) RSAドクターから第1戦コルビが大けがをする危険があったとの報告を受けた。(注:60分、LIO9がジャンプキャッチするコルビの足を引きずり落とし倒している。これは明らかにカードもの。ただし、試合ではPにもならず何のお咎めもなし。)絶対に青少年があんな危険なプレーをしないようにしなければならない。
(4) 第1戦のLIOの勝利への不満は一切ない。
(5) 第1戦の翌日・日曜日に、レフリングについての疑問点についてビデオ・クリップを添えてWRに質問したが、やっと返事が返ってきたのが火曜日だった。これは6か国対抗と同じ扱いらしい。ただし、次の試合のプレーに反映させるためには、遅すぎる。

4. エラスムスは、第1戦のレフリングの問題点・36シーンを1時間余りの動画に編集し、SNS上で公開。

5. 82日(月)、WRはエラスムスとRSA協会を規律委員会にかけるとの声明を発表。
(注:WRのホームページに掲載されたリリースからは『両チームからマッチオフィシャルの「選定」「判定」「態度」に対する公開での非難(public criticism)が出されたのは容認できない。』として、「喧嘩両成敗」的に両チームを断じた上で、RSAは「度が過ぎている」として規律委員会にかける、と読み取れる。)


 この経緯を踏まえて、あらためて第1戦を見返してみる(RSA寄りに見てしまう)と、たしかに次々に判定がおかしく見えてくる。特に、エラスムスが3-(3)で指摘したプレーはその通り。

 そして、第2戦のレフリー団の行動を見ていると、明らかにエラスムス動画の効果が出ている。たとえば、第1戦、レフリーはLIOのキャプテンには優しく・丁寧に、RSAのキャプテンには冷たく・素っ気なく接しているのが、第2戦は、どちらのキャプテンにも丁寧に説明している。

 もちろん、ニッポン流に「世間を騒がせたら」ごめんなさい、で「蓋をする」ことも一つの解決策なのかもしれない。ただし、それではレフリングの向上に結び付かない。
一方、正否を明らかにすることを旨とすれば、エラスムスが指摘した問題点・36シーンが本件の「肝」となる。そして、エラスムスは準備万端で公開しているので、エラスムスの主張そのものを間違いだとすることは困難であろう。
 かつてエディー・ジョーンズがエラスムスを“Cunning”と称した面目躍如、どう推移していくのか。みんなで「よりよいレフリング」のための建設的な議論が積み重ねられることを願っている。

令和387

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