【ヨハネスブルク=黒岩竹志】5日死去した南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領の追悼式が10日、ヨハネスブルク郊外のサッカー競技場で行われ、各国要人を含む約5万人が、アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃へと導き、人種融和を進めたマンデラ氏の功績をたたえた。
米国からオバマ大統領、ブッシュ前大統領、クリントン元大統領、カーター元大統領の歴代4人が出席したほか、英国のキャメロン首相、フランスのオランド大統領ら100人を超える要人が集まり、アフリカ史上最大規模の式典となった。日本からは皇太子さまが、福田康夫元首相らと出席された。式典では、オバマ大統領が「20世紀最後の偉大な解放者だ。我々はマンデラ氏から何を学ぶべきかを問いかけなければならない」と語った。
旧黒人居住区ソウェトに近い競技場では、2010年のサッカー・ワールドカップ(W杯)の閉幕式が行われた。これが、マンデラ氏が公の場に姿を見せた最後となった。
(2013年12月10日23時15分 読売新聞)
■平野克己氏(日本貿易振興機構・アジア経済研究所上席研究員)
マンデラ氏は民主化を進めたことで、世界経済の拠点の一つとなった南アフリカ経済の基礎をつくった。 南ア企業は民主化を機に、一気にアフリカ大陸に進出した。それを可能にしたのが、アパルトヘイトから完全に脱却できると世界に信じ込ませた、マンデラ氏の存在だった。民主化は課題も生んだ。その一つが、世界一とも言われる貧富の格差だ。民主化で白人と黒人の間だけでなく、黒人同士の間にも大きな格差が生まれた。多くの犯罪組織が入り込み、治安悪化は海外からの企業進出のネックになっている。昨年8月には、北部ルステンブルクのプラチナ鉱山で賃上げを求めた労働者の一部が暴徒化し、警官隊の発砲で34人が死亡した。世界の投資家は、現政権の統治能力を疑い始めた。マンデラ氏は生前、対立を和らげることが政治の役割だ、と主張してきた。南アが課題を克服できるかどうかは、現政権がマンデラ氏の精神を継承できるリーダーを生み出せるかどうかにかかっている。(聞き手・三浦英之)
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