2020年2月2日日曜日

岡島さんの 2019W杯・備忘緑 8

2019W杯・備忘録 8
~ 二列目 ~
 4番・5番のロックは、かつて「二列目」(Second Row)と呼ばれていた。1番・2番・3番が(スクラムの)「一列目」、6番・7番・8番が(スクラムの)「三列目」。
 大会前のNHK特番で、田中選手が各ポジションを動物に例えていた。
1番・3番が「象」、2番が「猪」、4番・5番が「キリン」、6番・7番が「ゴリラ」、8番が「ライオン」、9番が「サル」、10番が「ヒト」、11番・14番が「チーター」、12番・13番が「トラ」、15番が「ワシ」
なるほど、うまく特徴が出ているな、と感心した。

エレロ『ラグビー辞典』の「二列目」の項は、次のようにはじまる。
「二列目という表現は、誤った印象を与える。いかなる場面でも、二列目は一列目の後ろに隠れた存在なんかではない!それとは正反対で、常にあふれる熱情を持ちながらあらゆる密集の中心にいる、真の戦士なのだ。4番・5番の二人の選手はその堂々たる体躯で明白に見分けられる。ちびで貧弱な二列目なんて見たことがない。仮にいたとしたら、それは日本人チームかインド人チームかだ。彼らのミッションは二つ、どちらも究極の格闘だ。ラインアウトでの空中戦と難解なラックという地上戦で相手を制圧すること。もし動物に例えるとしたなら、「アホウドリ」と「サイ」を掛け合わせたものであろう。」

二列目が機能しないと試合にならない。
二列目は、草食系でなく、獰猛で、かつ、跳躍力に秀でていなくてはならない。

今大会の日本チームの二列目のスタッツは次のようになっている。
M1 対ロシア戦

 ①
 ②
 ③
 ④
 ⑤
4 (ファンデルヴァルト)
  60
   3
   2
  11
   8
19(トンプソン)
  20
   2
   -
   3
   2
5 (ムーア)
  80
   8
   6
  10
   7
① 出場時間(分)
② ボールを持って走った距離(m
③ マイボール・ラインアウトでのボール獲得
④ タックル数
⑤ チーム全体のタックル数に占める割合(%)
(注1)マイボール・ラインアウトは二列目の他に、6番(リーチ)が3回、22番(松田)が1回、11番(レメキ)が1回キャッチしている。
(注2)タックル数が二列目を上回ったのは、2番(堀江)18回、7番(ラブスカフニ)18回、8番(姫野)13

M14 対アイルランド戦

 ①
 ②
 ③
 ④
 ⑤
4 (トンプソン)
  63
   1
   -
  19
  11
19(ファンデルヴァルト)
  17
   1
   -
   5
   3
5 (ムーア)
  80
  15
   1
  24
  14
(注1)マイボール・ラインアウトは二列目の他に、6番(姫野)3回、20番(リーチ)が2回キャッチしている。
(注2)タックル数が二列目を上回った選手はいない。

M26 対サモア戦

 ①
 ②
 ③
 ④
 ⑤
4 (ファンデルヴァルト)
  67
   4
   1
  15
  12
19(ウヴェ)
  13
   2
   -
   1
   1
5 (ムーア)
  80
   2
   4
  14
  11
(注1)マイボール・ラインアウトは二列目の他に、6番(リーチ)が3回、20番(ツイ)が2回、7番(ラブスカフニ)が2回、15番(山中)が2回キャッチしている。
(2)タックル数が二列目を上回った選手はいない。

M40 対スコットランド戦

 ①
 ②
 ③
 ④
 ⑤
4 (トンプソン)
  80
   3
   -
  18
  12
5 (ムーア)
  51
   8
   2
   5
   3
19(ウヴェ)
  29
   4
   -
   4
   3
(注1)マイボール・ラインアウトは二列目の他に、1番(稲垣)が1回、6番(リーチ)が1回キャッチしている。
(注2)タックル数が二列目を上回った選手はいない。
(注3)タックル数、SCO5番(グレイ)は28回、7番(リッチー)は24回、敵ながらあっぱれ。

M44 対南アフリカ戦

 ①
 ②
 ③
 ④
 ⑤
4 (トンプソン)
  53
   7
   1
   7
   7
19 (ファンデルヴァルト)
  27
   -
   -
   4
   4
5(ムーア)
  80
   -
   1
  14
  14
(注1)マイボール・ラインアウトは、二列目の他に、6番(リーチ)が5回キャッチしている。
(注2)タックル数が二列目を上回った選手はいない。

 二列目が躍動すると試合をものにできる。
ムーア、紛れもなく今大会の日本チームのMVPだと思う。それにしても、二列目はみんなカタカナ名である。素朴に寂しさを感じる。だから何か問題なのか?ではあるが…


かつて(1番から5番までがスクラムの前方を形成することから)「前5人」というグルーピングがあった。このところ、前5人よりも「バック・ファイヴ」(4番から8番まで)とグルーピングされることが多い。現代ラグビーの変化を反映している気がする。もちろん、様々な要因があげられるが、その一つに、リザーブが8名になり、一列目(1番・2番・3番)が専門職化し、必ずリザーブに登録されることになったのも大きい気がする。すなわち、一列目は6人で編成される。多くのチームは、リザーブ8人のうち、5人がフォワード、3人がバックス。このフォワード5人のうち3人が一列目となると、残りの2人は、二列目も三列目も出来る選手が好まれるようになる。戦術面でも、二列目と三列目の役割が重なるようになってきたのかもしれない。

ミディオリンピックが選んだ2019ベスト15(見出しは15だが、記事の中では23名を意識している。現代ラグビーは、ベスト15ではなくベスト23なのだろう。)
1.ムタワリナ(南ア)、2.堀江、3.シンクラー(ENG)、4.イトジェ(ENG)、5.エツベツ(RSA)、6.サベア(NZ)、7.ドゥトイ(RSA)、8.ヴニポラ(ENG)、
9.デクラーク(RSA)、10.ファレル(ENG)、11.アダムス(WAL)、12.デアレンディ(RSA)、13.ラドラドラ(FIJ)、14.コルビ(RSA)、15.バレット(NZ,
16.ジョージ(ENG)、17.ヴニポラ(ENG)、18.マルエルブ(RSA)、19.ジョーンズ(WAL)、20.姫野、21.ヴェルミューレン(RSA)、22.デュポン(FRA)、23.松島
リザーブは、フォワード6人、バックス2人となっている。

優勝した南アフリカの強さの源泉が、二列目の先発2人と彼らと遜色ない活動量のリザーブ2人が躍動し続けたことであること、に異論はないであろう。これからの4年間でハイレベルの二列目を4人鍛え上げられるか、各国の選手強化が始まっている。
フランスでは、8日(水)に、ガルティエ新HCが代表合宿に召集する42名を発表した。19人が初召集。平均年齢23,8歳(フォワード23,9歳、ハーフ団22,5歳、バックス24,3歳)、最年長はこの6月に30歳になったルルー。「4年後の初戦までに、あと36試合しかない。」と語ったガルティエ。冬に6各国対抗5試合のあるフランス。今年は、22日の対イングランド戦が初戦。ガルティエの「賭け」が吉と出るか凶と出るか、そして、4年間ぶれずに思い通りのチーム作りができるのか?
日本代表の試合数は、フランスより少ない。どのように強化してゆくのか、楽しみである。

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