2021年6月26日土曜日

岡島レポート・2019W杯・備忘録 83

                                            2019W杯・備忘録 83

       ~ ライオンズ(2)


 プレーヤーが試合に出場するためには「選」ばれなければならない。選手と言われる由縁だ。

ライオンズのキャップを獲得するためには、①ライオンズ・ツアー(以下「LT」)・メンバーに選ばれ ②その中からテストマッチ・メンバーに選ばれなければならない。


 2019W杯準々決勝:NZ戦で敗退し、スタジアム全体からの熱い拍手で見送られたIRE主将・ベストは、自伝の中でライオンズについて次のように回想している。


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 IRE2009・六か国対抗でグランドスラムを達成し、主としてリザーブのフッカーとして出場していた。2009LTメンバーには、IRE・正フッカー、ENGWALの三人が選ばれた。遠征出発前にIRE・正フッカーがケガで辞退したため、自分に番が回ってくるかと思ったら、SCOのフッカーが選ばれた。


 2013LTには選ばれると自他ともに思っていた。しかし、メンバー発表の日、クラブの練習場では誰も目を合わせてくれない。そして、落選を知らされる。家に帰ると妻が涙にくれている。父にも慰められるが、心底落胆し、ラグビーする気になれない。そんな時、ライオンズFWコーチ・レントリー(ENG)が記者会見で「フッカーについては、何の問題もなく三人を選びました(ベストは考慮外を意味している)」と説明しているのを目にする。彼の無慈悲な発言が頭から離れない。(I couldn’t get the comment out of my head.

 ところが、ENGフッカーが遠征前のクラブの試合でレフリーに暴言を吐いて出場停止処分となり、思いがけず遠征メンバーに追加召集される! だけれども、コーチ陣は自分をまったく評価していないと思い込んでいる。だから悪循環に嵌まった:コーチは自分をリスペクトしていないとしか考えられない。FWコーチ・レントリーと話すが、ENG流の上から目線のコーチングに耐えられない。そんなこんなで引きこもり・一人で過ごすことが多くなる。

 そして、ミッドウィーク・マッチのキャプテンを任される。束の間喜んだが、コーチ陣はテストマッチのことしか考えていなくてミッドウィーク・チームは付け足し(afterthought)でしかないことに気づかされる。

 結局、私(ベスト)抜きのライオンズ(The Lions -without me-とはっきりと書いている)は、テストマッチ21敗で遠征を終えた。でも、これだけのメンバーであれば3連勝できたはずだ。惨めな7週間を耐え忍んだ(I had endured a miserable seven weeks)。


 その後、IREはシュミットがHCに就任し、キャプテンに指名され、快進撃を続けNZにも史上初めて勝利する。だから、2017LTの中心選手でもおかしくなかった。

 そうであるが、2017LTHCにガットランドが指名され、FWコーチにレントリーが再指名された。だから、大きな期待は抱かないようにしようとした(I knew I had to temper my expectations)。それでも今回はすんなりと選ばれた(This time there would be no last-gasp dramas for me)。選ばれた三人のフッカーの中で一番テストマッチに近いと思っていた。

しかし、初戦の一回のラインアウト・スロー・ミスでその望みは消え去った。スケープゴートにされた。そもそもラインアウトはスロアーとキャッチャーそれにリフターも含めた集団プレーだ。ENG流とIRE流の違いもある。それなのに、責任を自分一人に負わせるなんて やりきれなくなってIRE本国のメンタルコーチに電話した。彼は「テストマッチに選ばれるか否かなんかで悩むんじゃないよ。ツアーから帰った時に子供たちに「最高のラグビーをプレーしてきたよ」って言えるかどうか、それが問題なんじゃないかな。」とアドバイスしてくれた。これで少しは気持ちの整理ができた。

今回もミッドウィークのチーフス戦でキャプテンに指名された。チームメイトもみんなテストマッチに選ばれないことがわかって落ち込んでいる。試合前にこう発破をかけた。「この試合がこのゲームに出場するみんなのツアーの意義を決めるんだ。国に帰って、生涯、あのツアーではエンジョイできなかったと思い続けるのか、それとも、テストマッチなんか糞くらえ、ラグビーを思いっきりプレーするか」。試合は34-6で快勝した。一緒に戦い、熱い友情も芽生えた。しかし、コーチ陣の評価は変わらない。最初からテストマッチの23人を選んでいて変えるつもりはさらさらなかった。

 遠征後、テストマッチにも出場したオブライエン(IRE)がインタビューで「テストマッチでは3連勝できたはずだった。」と言い、練習内容とアタックコーチを批判した。彼の率直な感想だ。ガットランドは即座に否定するコメントを出した。

3連勝は非現実的だと思うがオブライエンの言ったことに共感している。もちろんガットランドの力量で好成績を収めたことも事実だろう。だけど、ガットランドはWALの選手だけを信頼していたのも紛れもない事実だ。(He undoubtedly showed a lot of loyalty to his Welsh boys, but that is what coaches do.

フィジカルなセンターを二人並べるガットランド流のゲームプランでは、NZRSAには勝てっこない。IRENZに勝利したようなシュミット流でプレーすればいいのだが。

 

ライオンズのジャージを身に着け、そして、20132017とミッドウィークのキャプテンを務めたことはとてつもない誇り(extremely proud)だ。だが、未来のライオンズが成功するためには、①4協会の混成チームなのだから、コーチ陣も4協会から選ぶべきだし ②選手選考をより科学的なデータに基づいて行うべきだ。

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 IRE代表として124キャップを得たベストは、ライオンズキャップ「0」で現役生活を終えた。


 今回のライオンズRSAツアーでは、コーチ陣にENGが入っていない。テストマッチの23人、誰が選ばれるのか、楽しみである。


令和3626

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