2021年6月12日土曜日

岡島 レポート・2019W杯・備忘録 81

 2019W杯・備忘録 81

 ヘッドコーチ 

 近代は、分業・専門化の時代であり、現代は、それが加速化・・細分化・深化している。ラグビーとて、時代の流れと同期する。コーチの役割も分化し、ヘッドコーチが出現する。

 日本協会のホームページを見ていると、日本代表のスタッフとして、ジョセフ・ヘッドコーチのほかに、藤井ナショナルチームディレクター、アシスタントコーチ3人、ストレングス&コンディショニング(SC)コーチ、アシスタントS&Cコーチ2人、分析2人、ドクター、パフォーマンスコーディネーター、アスレチックトレーナー、トレーナー、メンタルコーチ、通訳、パケージマスター、チームマネージャー、アシスタント、チームメディアマネージャー、計20名が掲載されている。
 やがて、マンツーマンを超えて、選手一人に一人以上のスタッフがサポートする日が来るのかもしれない。

 最近出版されたバレットの自伝『ボーデン・バレット 世界王者の司令塔~頂への道のり~』(ベースボール・マガジン社)を読んでいて、「ここ数年、ラグビーの世界においても、メンタルヘルスのケアや、体の準備と同等に脳を準備するといった、心理的な側面を大切にすることの重要性が浸透してきた。」(p197)「オールブラックスに入ったばかりのころも、周りについていくのに精一杯で、頭に余裕がなかった。メンタルコーチのギルバート・エノカ氏と時間を共にするにつれて、誰かのためにという気持ちを実際のパフォーマンスに転換する方法を知った。それができるか否かが、良い選手と最高の選手の分かれ目になることを学んだ。」(p199)が印象に残っている。

 身体能力を発揮するためのテクニックが求められる時代から、身体能力そのものを向上させるS&Cに力点が移行し、今日では「心身」の「心」にも重きが置かれるようになってきている。近未来には、何が付加され・重要視されているのだろうか

 こう書いてきて、かつてラグビーは「ノッポもチビも、ヤセもデブも」どんな奴にも相応しいポジションがあるスポーツと言われていたことを思い出す。いまや、ウィング並みのステップを切るフロント、二列目並みのブレイクダウン・スキルがすべてのプレーヤーに求められるように、15のポジションの高度化・均質化が求められている気がする。

 時の流れとともに、選手が若返るだけでなく、ヘッドコーチも若返るはずだ。主要代表チームのヘッドコーチは、現時点で、次のようになっている。


  RSA
  NZ
  AUS
  ARG
  JPN
2019W
エラスマス
* -
 1973
ハンセン
  -
1959
チェイカ
  -
1967
レデスマ
* -
1973
ジョセフ
*(NZ
1969
現在
ニーナバー

 1972
フォスター

 1965
レニー
NZ
 1963

* 同上

* 同上


 ENG
 WAL
 IRE
 FRA
 SCO
2019W
ジョーンズ
 (AUS
 1960
ガトランド
 (NZ
 1963
シュミット
 (NZ
 1965
ブリュネル

 1954
タウンゼント *
 1973
現在

 同上

ピヴァック
 (NZ
 1962
ファレル
*(ENG
 1975
ガルティエ
 1969

* 同上
(注)2段目「*」は、選手としての代表歴。「(国名)」は、出身国。

 ジョーンズは自伝の中で「フッカーはスクラムの中央にいて、明確な指示を出すことが求められる。それは、コーチに求められていることでもある。」(p73)というようなことを書いている。
 上記16名をポジション別に見てみると、フッカー出身が3名(ジョーンズ、ガットランド、レデスマ)、二列目が1名(ピヴァック)、フランカー2名(エラスムス、ニーナバー)、No82名(チェイカ、ジョセフ)、スクラムハーフが1名(ガルティエ)、スタンドオフが3名(タウンゼント、フォスター、ファレル)、センターが1名(ハンセン)、ウィングが2名(シュミット、レニー)、フルバックが1名(ブリュネル)。

 経歴を見ていて興味深いのが、ニーナバー。エラスムスの下で、S&Cコーチからディフェンスコーチになり、HCに上り詰めている。履歴書を自ら書き込んでいく時代になった。これからのHCの履歴書、どのような経歴が書き込まれていくのか、興味深い。

令和3612

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