2021年5月15日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 77

                2019 W杯・備忘録 77

 ~ ガバナンス ~

  前回紹介したドキュメンタリー『パシフィックラグビー 光と影』ではWorld Rugbyの評議会の構成が不公平である、と指摘していた。これは、ある意味で正論である。現在のティア1中心の評議会構成は均衡を失している。

 では、加盟協会それぞれが1票ずつ持つことがいいことなのか?

  「ガバナンス」という言葉を耳にし・目につくようになったのは近年のような気がする。手元の広辞苑・第5版には掲載がなく、第6版から出現する。第7版では『ガバナンス【governance】統治・統制すること。また、その能力。』とある。人間社会の始まりからそういう行為・機能は存在したのだろうが、それに言葉を与え明確にしたのは近年で流行り言葉になった、ということだろうか。

 統治・統制主体は、何を目的としているのだろうか?

 統治・統制主体を「選ぶ」のは、誰なのだろうか?

  世界ラグビーのガバナンスはどうなってきたのか?

 エレロ『ラグビー愛好辞典』「International Board」の項では、次のようなことが書かれている。

・ 1884ENG/SCOの試合(レフリーはIRE人)でのENGのトライを認めるか否かで紛争が起こり、翌年の試合は中止となった。そのような状況下で、SCOが仲裁機関の創設を提案し、ENGが受け入れた。ラグビー界の司法機関:International Rugby Football Boardの創設である。そこにはENGの狡知が働き、ENGがマイナーにならないように、ENG:6、SCOIREWAL:各2の票が割り当てられた。

・ RSAAUSNZが加盟したのは、1948年。

1958年に、やっと、各協会2票の構成となった。

FRAが加盟したのは1978年。

・ International Boardは創設時から、ラグビー界におけるテストマッチ(協会代表チーム間の試合)の規則の制定及び紛争の処理機関であった。1948年には次の規定が制定される:「競技規則の制定・改正及びその解釈に関してはInternational Boardの所定の機関で決定されなければならない。加盟協会間のすべての試合はInternational Boardの監督下にある。」

  件のドキュメンタリーでWRCEOは「1協会1票の方がより公平ではないですか?」という問いかけに対して次のように話している。

「それだと歴史が反映されず、現時点での試合への経済的貢献も反映されないことになる。1協会1票の考え方は、投票権を持つすべての国を管理するという問題が発生する。」

  おカネが絡まないアマチュア時代、紛争の仲裁が主たる目的であった。それであれば、気の合った仲間内のことで済んでいたのかもしてない。しかし、ラグビーが仲間内のことでは済まずグローバル化し、かつ、プロ化すれば、おのずとガバナンスのあり方も異次元のものが求められる。では、それは「収益最大化を目的とする」ガバナンスなのだろうか?

  サッカー界の世界統括組織であるFIFAは、1協会1票制である。しかし、そこでは世界を揺るがす大スキャンダルが生じたりしている。「他山の石」とすべきなのだろうか?

 投資ファンドの投資対象になりかねない現在、1協会1票は、現代民主主義社会における最低限満たすべき要件の一つなのであろうか。

  WRは、5月12日の評議会で、独立委員会が提案していたガバナンス改革案(①現行のティアに代わる加盟協会の格付け制度(reclassification of Unions)を導入し②評議員数を①に応じて割り当てることなどを内容とする)を承認し、2024年から実施すると発表した。どのような変化が生ずるのか、期待したいものである。

  世界のラグビー界のガバナンスを考える上では、選挙⇒選挙権・被選挙権の在り方が論点となる。では、日本国内のラグビーのガバナンスを考える上で同じ論点が成立しうるのか?

 日本ラグビーフットボール協会は、英語名:Japan Rugby Football Unionと称しているが、「財団法人」として国内法に基づく法人格を有している。すなわち、人的結合体ではなく、構成員が存在しない。換言すれば、基本財産に法人格が与えられており、根源的には選挙という行為は存在しえない。

 では、日本ラグビー界のガバナンスは、何を論点として議論すればいいのだろうか?

  そして、私たちは、良質な「パンとサーカス」を待ち望むだけの存在なのだろうか?

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  ラストシーズンのトップリーグも佳境に入ってきた。

準々決勝3試合とも見ごたえがあった。試合中の逆転回数だけを見ると、パナソニック32-17キャノン:0回、トヨタ33-29ドコモ:3回、クボタ23-21神鋼:2回であった。

準決勝、決勝、逆転劇が起こるのかどうかも気になっている。

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  510日、WRから今年6月のテストマッチが発表になった。ライオンズのRSA遠征が最大の目玉であり、各国の試合が展開される。JPNはもちろん、パシフィック諸国、USACANの試合も含まれている。WRによれば、ランキング上位30か国のうち25か国の試合が組まれたとのことである。気になったのは、ITAの試合が見当たらないことである。どうなっているのだろうか?

                                                                                   令和3515

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