2019年10月29日火曜日

ムッシュー岡島さんからの報告・・・

あの試合 見れば見るほど 発見がある 興味深い試合でした。たしかに オールブラックスは強いけれど 一発勝負には弱い という 昔のオールブラックスに戻った気がしています。
準決勝の振り返りを書きました。

強いから勝ったのか、勝ったから強いのか?(準決勝篇)
 【 総論的に 】
準決勝4チーム、いずれのチームも1トライ1ゴールをあげている。勝負を分けたのは、PGでの得点。以前は、ゴール成功率が試合を左右していたが、このレベルでは、ほぼ100%。したがって、① 規律を守る=ペナルティを犯さない ② ペナルティを獲り(盗り)に行く、というのが戦略的に重要となる。
①は、一言で言うとスキル+耐久力=我慢、特に、自陣ではペナルティを犯さない。
②は、大別すると、②-1 スクラムで圧倒しコラプシングを獲る ②-2 ラインアウト・モールでコラプシングを獲る ②-3 ブレイク・ダウン、ラックでノット・リリース・ザ・ボール、ノット・ロールアウェイを獲る ②-4 相手を挑発する ②-5 その他に分けられる。
この点で、NZは、もともと②的な戦略に乏しい感じがしていた。逆にいうと、他の3チームは「勝ちにこだわって」②的な戦略をチームに落とし込めていた感じがする。
 結果として、
第一戦では、NZ11ペナルティを取られ、4PGを決められ、敗北した。ENGは6ペナルティを取られるものの全て相手陣内であり、PGは狙われていないし、決められていない。
第二戦では、WALは8ペナルティを取られ、4PGを決められ、RSA9ペナルティを取られ、3PGを決められたものの、PGの差で勝利した。

【 第一戦 ENG/NZ 】
1) 試合前の練習、NZはオールメンのアタック・ディフェンスを行わず、スクラムも組まず・ラインアウトも合わせず、極めて軽めの練習だけで引き上げた。(他の3チームは、きちんと体を当てていた。)これが、試合立ち上がりのENGのトライに繋がっているのかは定かでないが、謎である。ちなみに、試合終了後、NZのリザーブで途中出場した選手たちは、グランドで練習してから引き揚げている(少なくとも、この試合とその前の準々決勝対アイルランド戦終了後は実見した。試合終了後の練習は、NZのみ)
 2) NZ6番にS・バレットを先発で入れたのも謎。ハンセンHCは「戦略的な起用」と発言していたが、その戦略が顕在化しないまま、ハーフタイムで本職のケインに交替している。これは、選手に対しても悪いメッセージとなったのではないか。
 3) 後半16分、ENG陣内のラックでENGのペナルティ。レフリーの笛の後での「小競り合い」でNZ5番ホワイトロックがENG12番ファレルを押し倒したとして、ビデオが映され、ペナルティの差し替え。この試合の一つのターニング・ポイントとなった。このシーンは、不可解な行動の固まり。なぜ、笛が吹かれた後でファレルがボールの傍に近づいていったのか?通常であれば、クイックリスタートに備えて、自らのディフェンス・ポジションに一目散に戻るのではないか?本当に、倒されて頭を抱えるほど痛かったのか??そもそも、レフリーが笛を吹いた後も寝たままボールを離さないENG4番イトジェの行為は許されるのか???
かつて、『殴られた選手にペナルティを課したレフリーがいた。なぜならば、ラグビー選手は根拠なく人を殴ったりしない。殴られたのはそれなりの不行跡を犯したのであろう、と推定できる。自分(レフリー)は現認していなくても、殴られた事実がそれを証明している。これがラグビーの精神だ。』と教えられた気がする。プロ化した現代ラグビーは、現代社会同様、合法的な挑発行為はOK、手を出したら負け、という決まり。規律を守れなかったホワイトロックは単なる「おばかさん」だったのか…
 4) NZハカの時、ENGV字で取り囲んだ。2011年第7回大会の決勝NZ/FRAでは、FRAが逆V字で並びハカ開始とともに前進し、最後はハーフウェイライン上で一列になり、ハカ終了後、両軍選手がにらみ合った。FRA選手がハーフウェーラインを僅かに越えたシーンでは審判団が自陣に戻るように注意した。(確か、越境したことに対して罰金を支払わされたのでは?)ハカ時に越境してはいけない、というのは不文律、慣習法的に存在している。この試合のレフリーは、WAL人、タッチジャッジ2名はFRA人。当然、FRA人タッチジャッジが越境はだめと注意を与えたにもかかわらず、無視して相手陣に数人が位置したままハカが終わった。実際のところどうだったか勿論定かでないが、確信犯的に違反行為をしたことを許すべきではない。極めて非紳士的行為である。一方で、審判団の反応を見るために故意の越境をしたのではとも勘ぐれる。試合結果から見れば、この非紳士的行為は効果があった、とも言える。
 5) 「NZは強い、だけれどもワールドカップでは勝てない。」というのが、1991年以降のラグビー界の常識だった。すなわち、第2回大会から第6回大会まで優勝していない。1987年に優勝して以来、2011年第7回大会で優勝するまで、5大会続けて、決勝ラウンドで1敗し続けた。一発勝負に弱いという常識を打ち破ったのが、ヘンリー・ハンセン体制。今大会でハンセンHCは退任する。次回大会、おそらく、NZは優勝候補にあがるだろうが、果たして、昔のようにワールドカップと縁のないチームになるのか、どうか?

【 第二戦 RSA/WAL 】
1) 選手層の厚さの違いが如実に出た試合。現在のラグビーは15人ではなく、23人での戦い。WALは、この試合までにもケガで次々に選手を欠いてきていて、この試合でも、前半に、3番・14番がケガで交代。一方のRSAは、予定通りの選手交代を後半に行い最終的に勝利した。RSAが交代で投入したのは、FW6人とBK1人で、SHのリザーブは投入せず。
WALENGNZはリザーブ8人全員を投入している。)
2) 後半23WALがトライし、むずかしい位置からのコンバージョンをハーフペニーが決めて、完全に「負けない」WALペースになった感がした。そして、RSAのキックオフからのリスタートでも、うまく相手陣に入ることができ、残り10分を迎えた。いつもの試合であれば(?)相手陣にいたまま、もっと我慢強くフェーズを重ねるはずなのに、10フェーズ目でドロップゴールを狙って相手にボールを渡す。(トライを取ったシーンでは相手ゴール前で20フェーズを重ね、そこでペナルティを得ている。)それでも、相手フルバックのタッチキックで、まだ相手陣内のマイボールラインアウトで攻勢を続けられるはずが、ラインアウトが機能しなくなってきていた。
3) WALガットランドHCは名将と言われて久しいが、この試合のラインアウト、考え抜かれたラインアウトで長身ぞろいのRSAに対して、なんとか対抗できていた。が、残り10分でラインアウトの綻びが次々に出てきてしまった。これが直接的な敗因だったのでは。ただ、ガットランドWALらしいラグビーが最後まで展開された。
4) RSAから見れば、我慢比べをしながら体力勝負、しかも23人での体力勝負に持ち込んで、ゲームプラン通り、勝利を手にした、ということではないか。この点で、ENGRSAも的確なゲームプランの下、それを堅実に実行できる23人が揃っている、とも言い得る。

 【 興味深いスタッツ 】
 * タックル成功率

  ENG
  NZ
  RSA
  WAL
成功率(%)
     81
     89
     93
     82
タックル数
    147
    164
    147
     74
ミスタックル数
     34
     20
     11
     16
ENG、「よくささってた」印象があるが、タックル成功率は低い。81%は、準々決勝4試合8チームの数字よりも低い。一方で、対戦相手NZの攻撃力によるものとも考えられる。確かに、準々決勝のNZの対戦相手IRE82%であった。そうであるにも拘らず、ENGが完勝した。
ちなみに、個人スタッツを見ると、RSAフルバックのルルー選手、68分間出ていてタックル機会数ゼロ。RSAのディフェンスが優れているのか、WALのアタック力が乏しいからなのか…
* ランメーター/キックメーター

  ENG
  NZ
  RSA
  WAL
ラン(m)(a
    406
    639
    296
    182
キック(m)(b)
    873
    624
    872
    931
(a) / (b)
    0,46
    1,02
    0,33
    0,19
同じ80分を戦いながら、NZだけが走り回っていた感がある。
RSAとともにWALもゲームプラン通りの試合展開だったのかもしれない。WALはボール保持率61%、陣地支配率62%でもあり、理想通りの試合展開だったのであろう。そうでありながら、RSAの超現実主義に敗れた、とでも言えるのだろうか。
* パス回数/キック回数

  ENG
  NZ
  RSA
  WAL
パス回数(a)
    184
    211
     71
    115
キック回数(b)
     37
     28
     40
     41
(a) / (b)
      4,97
      7,54
      1,78
      2,8
5年前に、当時ジャパンHCだったエディさんは、こう言っていた。
『パスとキックの比率。これが世界のラグビーを読み解くカギです。ワールドカップに参加する世界のチームであれば、4回パスしたら、1回はキック、というのが一般的な比率です。ところが、ジャパンの場合は違います。111.パスが11回に対して、キックが1回。これがジャパンに最も適した比率だというのが私の結論です。』
(生島淳『エディー・ジョーンズとの対話』文藝春秋2015年 p52
 ちなみに今大会のジャパンのパス/キック比率は、対ロシア戦 5,08 、 対アイルランド戦 9,13 、 対サモア戦 4,35 、 対スコットランド戦 17 、 対南ア戦 7,85
 * オフロード
ENG 8 、 NZ 15 、 RSA 2 、 WAL 2
ENGは、8番・ブニポラが3回、13番トゥイランギが1
 ちなみに今大会のジャパンは、943812

 【 蛇足 】
3回、第6回大会の優勝は、RSA。第9回も優勝して「筋」を通すのか?
ちなみに、フランスは、第1回・第4回・第7回と決勝に進出して、3度準優勝している。

◎ ジェイミー・ジョセフをヘッドコーチに招聘したのは、今年5月にラグビー協会を追われた人びと。彼らの名誉は回復されないのだろうか?

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