5月最終日、 今年は「五月晴れ」を味わったのだろうか それとも これから味わうのだろうか…
2019 W杯・備忘録 278
〜 2025六か国対抗 11 〜
エレロ『ラグビー愛好辞典』「スクラム」の項は こう始まる。
『大昔の闘争の遺跡、スクラムはスポーツ界における唯一無二の存在・ラグビーをラグビーたらしめる象徴的行為だ。19世紀イングランドの学校における揺籃期から、些細なミスを途轍もない集団的格闘で罰し、対面同士の激突がこのスポーツの存在意義となった。スクラムは1860年代に出現し、それから大変革が行われ、リスタートのセットプレーとして位置づけられ、野生がぶつかり・パワーとエゴを競い・友愛の大聖堂となった。』(p286)
2025六か国対抗のScrums Wonを見てみる。
(表-1 Scrums Won:2025)
| FRA | ENG | IRE | SCO | ITA | WAL | 1試合当 |
FRA | * | 5 | 3 | 2 | 5 | 5 | 4 |
ENG | 9 | * | 3 | 5 | 6 | 6 | 5.8 |
IRE | 4 | 5 | * | 8 | 3 | 4 | 4.8 |
SCO | 5 | 2 | 5 | * | 5 | 2 | 3.8 |
ITA | 4 | 4 | 8 | 5 | * | 7 | 5.6 |
WAL | 9 | 4 | 3 | 5 | 1 | * | 4.4 |
1試合当 | 6.2 | 4 | 4.4 | 5 | 4 | 4.8 | 4.7 |
Scrums Won数が多いチームが勝利したのが 9試合。このうち ITA(7)/WAL(1)という試合もあるが 他の試合は差が「3」以下である。同数が1試合。少ないチームが勝利したのが5試合。このうち FRA(5)/WAL(9)、IRE(3)/ITA(8)という試合がある。
単純に考えると ディフェンスで圧をかけ・相手のミス(ノックオン・スローフォワードなど)を誘い・マイボールスクラムが多いチームが 勝利に近づく…
ちなみに Scrums Lostについては
両チーム「0」の試合が 8試合(SCO/ITA、IRE/ENG、ITA/FRA、IRE/FRA、SCO/WAL、ENG/ITA、ITA/IRE、FRA/SCO)
「2」を記録したのは、ITA(2)/WAL(0)、WAL(1)/IRE(2)の2試合
それにしても スクラム…
手元の競技規則を眺めていたら、あれっ こんな変更があったのか と
(表-2 競技規則「スクラム」条項の冒頭)
平成14年度版 | 現行 |
定義 スクラムの目的は、軽度の反則あるいは競技の停止があった後、 早く、安全に、公平に試合を再開することである。 | 原則 スクラムの目的は、軽度の反則や競技の中断があった後、 ボール獲得のための争奪でプレーを再開することである。 |
2003年(平成15年)に出版されたエレロ『ラグビー愛好辞典』 「スクラム」の項の中ほどには 『スクラムに血道を上げる代表チームとして ウェールズ・南ア・フランスをあげ スクラムを単なるリスタートだと見なしているのが オーストラリア イングランドもその傾向がある』(p287)としている。今や どの代表チームもスクラムに力を入れている。
スクラムは いろいろな場で熱く語られているし それに値する奥の深いものがある。それはそれとして スクラムの原因については そこまで熱く語られていない気がする。
スクラム数という点で これまでも何回か触れてきたが 2023W杯:準々決勝:NZ/IRE戦 IREのスクラム機会「0」・NZのスクラム機会「5」が どうしても頭をよぎってしまう。そして スクラムのない試合が 理想の試合にも思えてくる が なんとなく 「クリープのないコーヒーなんて…」というフレーズも浮かんでくる。
スクラムが熱く語られるようになってきた原因の一つに スクラムでPが生じた後の フロント(普段は 顔が見えない)の絶叫が 「絵になる」ことが影響している気がしてならない。
現役時代フッカーだったエレロ スクラムについて(も) 熱く書き込んでいる。末尾に こんなことを書いている。
『スクラムに関するミステリーは ちょっと不健全な好奇心を掻き立てる。メディアが進出し・映像化が進化してくると ラグビー界も 俗っぽい視点で カメラを 舞台裏に 入り込ませるようになってきた。テレビは 目に見えないところで起こっていることを 映像化してきている。やがて フッカーのヘッドキャップか フロントの首筋に 小型カメラを設置して 陰で起きていることを映像化する日が来るかもしれない。』(p290)
スクラム これから どのように進化してゆくのだろうか。次回のW杯では どんなスクラムシーンが見られるのだろうか。
令和7年5月31日
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