2020年8月24日月曜日

岡島レポート・2019 W 杯・備忘録 40

   2019 W 杯・備忘緑  40
    ~   W杯の「Tier」 ~

 ワールド・ラグビーは、加盟国をTier1Tier2Tier3に分類している。今大会を終えて、JPNは、Tier2からTier1に「昇格(?)」した。喜ぶべきなのだろう…

 ところで、今大会を含めた9回のW杯における結果を表にしてみると次のようになる。


9
8
7
6
5
4
3
2
1
RSA
 ○  
 4  
 8  
 ○  
 8  
 4  
 ○  
 -  
 -  
ENG
 ●  
 -  
 8  
 ●  
 ○  
 8  
 4  
 ●  
 8  
NZ
 4  
 ○  
 ○  
 8  
 4  
 4  
 ●  
 4  
 ○  
WAL
 4  
 8  
 4  
 -  
 8  
 8  
 -  
 -  
 4  
JPN
 8  
 -  
 -  
 -  
 -  
 -  
 -  
 -  
 -  
AUS
 8  
 ●  
 4  
 8  
 ●  
 ○  
 8  
 ○  
 4  
IRE
 8  
 8  
 8  
 -  
 8  
 -  
 8  
 8  
 8  
FRA
 8  
 8  
 ●  
 4  
 4  
 ●  
 4  
 8  
 ●  
ARG
 -  
 4  
 8  
 4  
 -  
 8  
 -  
 -  
 -  
SCO
 -  
 8  
 -  
 8  
 8  
 8  
 8  
 4  
 8  
その他
 -  
 -  
 -  
FIJ8 
 -  
 -  
SAM8 
SAM8 
CAN8 
FIJ
(注)
〇 : 優勝
● : 準優勝
4 : ベスト4
8 : ベスト8

 ぼんやり眺めていると面白い…
 毎大会、必ず決勝ラウンドに駒を進めているのは、RSANZAUSFRAの4協会だけ。ENGは、自国開催の前回大会、まさかの予選リーグで敗退している。

 一大会の結果だけであれば、「運・不運」が大きく影響してくる可能性は否定できない。一方で、数大会での結果を通して見ると、その協会・チームの「地力」「実力」が現れる気がする。

 あえて、W杯参加協会・チームを「Tier」に分類すれば、こういうことも考えられうるのではないだろうか。

Tier1 : 決勝戦体験協会・チーム
Tier2 : ベスト4体験協会・チーム
Tier3 : ベスト8体験協会・チーム
Tier4 : 予選リーグ敗退協会・チーム

 この仮説に従えば、W杯・Tier1は、5協会・チーム。
9大会×2=のべ18チームが決勝に進んでいるが、5協会・チームが独占(?)していて、新規W杯・Tier1協会チームは現れていない。初期設定のように…

RSA   : 〇・3回           ( 第3回大会~ )
NZ   : 〇・3回  、  ●・1回   ( 第1回大会~ )
AUS   : 〇・2回  、  ●・2回   ( 第2回大会~ )
ENG   : 〇・1回  、  ●・3回   ( 第2回大会~ )
FRA :           ●・3回   ( 第1回大会~ )

 W杯・Tier2は、3協会・チーム。ARGの近年の成長は特筆すべきであろう。というか、「秩序」を破壊した唯一の協会・チーム。SCOW杯・Tier2とするか、このところのパフォーマンスからTier3に格下げ(?)すべきかもしれない。

WAL : 4・3回  、  8・3回   ( 第1回大会~ )
ARG : 4・2回  、  8・2回   ( 第6回大会~ )
SCO : 4・1回  、  8・6回。  ( 第2回大会~ )

 W杯・Tier3は、4協会・チーム。FIJSAMCANW杯黎明期の実績であり、Tier4に格下げ(?)すべきかもしれない。

IRE7回、 FIJSAM2回、 JPNCAN1

 ベスト8の壁があるように、ベスト4の壁、決勝戦の壁、そして、優勝の壁もあるのだろう。
 FRAの決勝3連敗、WALの準決勝3連敗、そして何よりIREの準々決勝7連敗。

 「壁」を超えた協会・チームが如何に少ないか。これだけ、あらゆるものが近代化・高度化・加速化していて「変化」することが常態化している中で、ラグビーW杯における「序列」は、なぜにここまで固定的なのだろうか。

 その意味でIREが、なぜ今大会でも準々決勝で敗退してしまったのか。JPNに「手を抜いて」負けた結果、NZと当たったことが大きいのかもしれないが、では、JPNに勝って「一抜け」していたら、RSAに勝てたのだろうか?

 IREは、第7回、第8回と予選リーグを4戦全勝・無敗で決勝ラウンドに進み、いずれも準々決勝で負けている。
今大会と同じ形式、20チーム・4予選グループになったのが、第6回大会である。そして、各大会予選リーグ無敗でありながら、ベスト8で敗退したチームが、各大会、出現する。今大会のJPNのように…

6回 AUSPoolA2位・ENGに敗退)
7回 IREPoolD2位・WALに敗退)
    RSAPoolC2位・AUSに敗退)
8回 IREPoolC2位・ARGに敗退)

 「壁」があるかぎり、それに挑み続けるのは人間の「性」なのだろう。ラグビーの原点の一つが闘争本能に根ざしているとすれば、ある意味当然のことなのだろう。
 IREが今大会の「失敗」をどう総括しているのか、次のW杯に向けてどう準備してゆくのか、楽しみである。

 JPNは、次大会以降、ベスト4の壁に挑むことになるのだろう… 
 今後、W杯・Tier2に仲間入りするのは、JPNなのか、IREなのか、あるいは無名の協会・チームなのか、興味深い。

 ちなみに、WRTier1協会で、W杯・Tier4なのは、ITA9大会連続予選リーグ敗退)。今や、WRランキングでもGEOの後塵を拝している。ITAが「特権的地位」を剥奪(?)される日が来るのか、あるいは、いつの日かW杯を開催することによりその地位を維持し続けるのか、これまた興味深い。

 1987年に第1回大会が開催されたラグビーW杯。2年後の1989年にベルリンの壁が崩壊した。1995年・第3回大会でRSAが国際ラグビー界に復帰し、同年ラグビーはプロ化した。ここまでに形成された「秩序」がほぼ今日まで続いている。なぜなのだろうか?
 常に変わらぬラグビーという競技の特性、時代環境としての世界の社会経済情勢、各国協会の歴史・伝統などが絡み合っての結果なのだろうか、それとも、偶然なのだろうか。
 栄枯盛衰・諸行無常が国際ラグビー秩序にも訪れるのだろうか…

 W杯、「短期決戦」なのだろうか、長期戦なのだろうか。プロ野球の日本シリーズは、よく「短期決戦」と称されている。優勝だけを考えるならば、W杯も日本シリーズも、事前に、7試合を想定して参戦するのだろう。

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 最近出版された『あの感動と勇気が甦ってくる ラグビー日本代表 ONE TEAMの軌跡』(著者:藤井雄一郎、藪木宏之 文・構成:伊藤芳明 講談社 2020年)では、次のように書かれています。
* ジェイミーはワールドカップ開始前の918日のチーム・ミーティングの際に、「トップ8への道のり」についてこう話しています。
「ベスト8が我々の目標とするなら、アイルランド戦は準々決勝、サモア戦は準決勝、スコットランド戦は決勝戦だ。ロシアは逆に日本戦を決勝のつもりで向ってくる。前回イングランド大会でポイント差でベスト8入りを逃したことを思い出せ。ポイントを取ること、特にサモア戦でポイントを獲得することが大事だ」(p164
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          令和2822日・記

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