2020年3月1日日曜日

岡島レポート・2019W杯・備忘録14

   2019W杯・備忘録14
   ~ Head Coach ~
 今大会、イングランドが優勝していたら、エディー・ジョーンズHCは大会史上初の「外国人」HCとなっていた。決勝で敗れたことから、その栄誉に浴することはできなかったが、大会史上初の決勝戦進出「外国人」HCとなった。
 過去8大会、決勝戦は常に自国人HCの対戦となっていた。前回大会(2015年)は、ベスト4もすべて自国人HC。前々大会(2011年)ベスト4では、ウェールズのHC・ガットランド(NZ、今大会終了後に退任)、オーストラリアのHC・ディーンズ(NZ、現パナソニックHC)の二人が外国人HCだった。
 サッカーW杯も、第21回ロシア大会(2018年)まで、優勝HCは、すべて自国人である。
 こういうのは、「ジンクス」なのだろうか?
 ちなみに、今大会ベスト8チームのHCは、NZ人(NZWALJAPIRE)4HC、オーストラリア人(ENGAUS)2HC、南ア人、フランス人となっている。
 フランスは、今大会前にラポルト協会会長が「(ガットランドを念頭に置いて)外国人HCの是非について」加盟地域協会に聞いたところ、反対が多数で、結局、フランス人・ガルティエが後任HCに就任することになった。国を挙げて自国人HCを望んだ、ということであろうか。
 ところで、フランスのHCの正式名称は、Selectionneur/Entraineur。英語にすれば、Selector/coachか。手元のオックスフォード仏英辞典によれば、selectionneur entraineur()team managerの訳も出ているが、現フランス代表にはイパネスがgeneral managerに就任しているので、この訳は不適切となる。かつては、Selectionneur すなわちselector=選手選抜者と呼ばれていた。国中からいい選手を選んできてチーム編成することに重きが置かれていて、具体的に選手に戦術を落とし込むことは二の次になっていた気がする。すなわち、「目利き」がHCに就任することが望まれた。あるいは、自らの戦術に適った選手を国中から選んでくる、ということか。
これはこれで理に適っている。多くの選手がシーズンの過半を自チームで過ごし、そこで鍛えられ・スキルを身につける。240日も代表合宿をする国は皆無である。代表チームと各(プロ)チームとの関係性が問われることになり、代表チームスタッフと各チームスタッフの役割分担も整理する必要がある。これを行なうのが、「協会」である。
 今大会前、ミディ―オリンピックのインタビューで上野裕一・アジアラグビー協会副会長は、「もはや外国人コーチはいらない」と明確に発言している。これはこれで一つの考え方であろうと思う。
一方で、「しがらみ」のない外国人の方が選手を公平に見られる、様々な圧力を受けずに選手を選べるという利点があろう。
 では、協会の誰が、あるいは、どの機関が如何なる基準でHCを選ぶのか、これはこれで重要であり、事前にきちんとしておくことが大切である。
 次回大会以降、240日の事前合宿を行い続けるのであろうか? HC選定基準に「日本人」が設けられる日が来るのか? 気になるところである。
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 松瀬学『ONE TEAMのスクラム 日本代表はどう強くなったのか?』(光文社新書)が出版された。面白い、ためになる、奥が深い… スクラムおたくの人だけでなく、「にわか」の人々にも、ともかく、読んでもらいたい内容である。

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