2019年11月30日土曜日

岡島さんの・2019 W杯・備忘録 3

2019 W杯・備忘録 3     
M14 JPN/IRE戦~
 日本チームの勝因は、さまざまに語り継がれていくだろう。怯まず攻め続けた選手を誇りに思う。1912、日本の勝利。その事実は揺るがない。
 一方で、「負けに不思議の負けなし」、IREの敗因は何だったのだろうか?
 【 スタッツから】
まず、スタッツで検証してみる。
IREは、安定したセットプレーからラックを連取し、パスとキック、そしてサインプレーを織り交ぜて得点を取る。また、安定した守りで最少失点に抑える。こうして数年間、勝利を積み重ねて、WRランキング1位に上り詰めた。
* 今大会の5試合の特徴的なスタッツを見てみる。
 1 ラック獲得数

第Ⅰ戦
 第Ⅱ戦
 第Ⅲ戦
 第Ⅳ戦
 第Ⅴ戦
   IRE
     96
    107
    107
    118
     98
対戦チーム
   SCO
     94
   JPN
    115
   RUS
     53
   SAM
     37
    NZ
    100
 毎試合、ほぼ100前後のラックを獲得している。なお、第Ⅳ戦・SAM戦は、アキが29分・レッドカードで退場(この時点で215でリード)、以降14人で戦っている(最終スコアは、475
 参考として、JPNは次の通り。

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
  JPN
     96
    115
     65
    114
     87
対戦チーム
   RUS
     89
   IRE
    107
   SAM
     72
   SCO
     87
   RSA
     68
 日本の場合、相手チームに応じて、かなり戦法を変えたのがうかがわれる。
 2 スクラムハーフのパス/キック比

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
パス/キック
 比率
  63/19
   3,3
   98/2
   49
   85/7
   12,1
   87/8
   10,9
   81/8
   10,1
 日本戦だけ、なぜか、スクラムハーフからほとんど蹴っていない。(第1戦・SCO戦では、19回蹴っている。)これが、この日の「ゲームプラン」だったのか?
    参考として、JPNは次の通り。

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
パス/キック
 比率
92/7
  13,1
  105/4
   26,3
   63/5
   12,6
  113/1
  113
   94/2
   47
 3 スタンドオフのパス/キック比

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
パス/キック
 比率
   6/11
   0,5
   23/10
    2,3
   28/8
    3,5
   26/8
    3,3
   24/9
    2,7
 この数字だけから見ると、第1SCO戦だけ、違う戦いをしていた感がある。一見したところ、数値の上では、セクストンと控えのスタンドオフの間にさほど差異はみられない。
  参考として、JPNは次の通り。

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
パス/キック
 比率
  28/15
   1,9
   31/5
    6,2
   22/11
    2
   44/5
    8,8
   36/14
    2,6
 4 タックル数(上段)・成功率(下段)

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
タックル数
成功率
   135
   94%
   171
   90%
    95
   90%
    63
   83%
   147
   82%
対戦チーム
   163
   91%
   176
   93%
   188
   89%
   190
   87%
   145
   92%
IPN/IRE戦に関して、スタンドオフ・セクストンの不在に言及されることが多い。この試合、セクストンと共にメンバーに名を連ねなかったのがセンター・(バンディ―)アキ。アキが不在の試合は、スリー・クオーター・バックスのタックル成功率が低下する。
2戦・JPN戦 (タックル数33 成功率80%
第5戦・NZ戦  (タックル数30 成功率71%
アキの不在は、第2戦はおそらくローテーション。第4SAM戦でレッドカードを受け、第5戦は出場停止処分中。
 参考として、JPNは次の通り。

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
タックル数
 成功率
   134
   86%
   176
   93%
   127
   90%
   148
   84%
   103
   87%
対戦チーム
   144
   75%
   171
   90%
   113
   84%
   199
   86%
   148
   88%
 両チームのタックル数・成功率をみて、あらためて、JPN/IRE戦の密度の濃さを思い知る。
 5 ペナルティを取られた数(上段)
そのうち、○:対戦チームのPG成功、×:PG失敗(下段)

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
取られた数
敵のPG
    8(Y-1)
  1
    9
4 ×2
    6
  -
    5(R-1)
  -
    6
 ○1
 敵のP
 IREPG
    6
 ○1 ×1
    6
  -
   10(Y-2)
  -
   17(Y-2)
  -
   13(Y-1)
  -
 参考として、JPNは次の通り。

  Ⅰ
  Ⅱ
  Ⅲ
  Ⅳ
  Ⅴ
取られた数
 敵のPG
    5
 ○1
    6
  -
   10
4 ×1
    7
  -
    8
3 ×1
 敵のP
 JPNPG
    5
2
    9
4 ×2
   10(Y-1)
4 ×1
    4
×2
    8(Y-1)
1
 得点で勝敗を決する競技では、各チーム、得点の最大化と失点の最小化をめざす。
ラグビーの得点源は、トライ(その後のコンバージョン)、PG、そしてDGに大別できる。
予選プール、1トライで勝利したのは、この試合のJPNのみ(他の勝利チームは、2トライ以上している。)。決勝ラウンドでは、準決勝2試合とも1トライ。
また、トライ数が敗者よりも少ないのは、この試合の他に、① M10 URG3T30-27FIJ5T)② M17 WAL2T29-25AUS3T) ③ M28 FRA2T23-21TON3T)の3試合。
この試合を決したのは、ペナルティの質(?)ということなのか?
 【 フランスのラグビー週刊紙・ミディ―オリンピックの戦評 】
試合終了から数時間後、ミディ―オリンピックのサイトに戦評が掲載された。
『ターニングポイントは、後半12分、JPNのハイパントをキャッチしようとしたIREの選手がJPNの選手に躓いてキャッチできなったプレーに対して笛が吹かれなかったこと』とあった。
 その後、このシーンを何度となくスローで見ている。時系列で書いていくと次の通り。
① ラックから出たボールをJPN9がハイパント(ボックスキック)
② JPNの9より後方にいたJPN4選手がキック・チェイス
③ IRE10がキャッチしようとジャンプする
④ JPN4選手のうちの先頭を走っていた1選手が、ボールは見ずに、IRE10の前で立ち止まる
⑤ ハイジャンプしたIRE10はボールキャッチに入り、空中で④の選手に躓く
⑥ IRE10、ボールを前に落とす
⑦ レフリーは「ノック・オン」のコール・ジェスチャーを示す
⑧ ノック・オンされたボールをJPNの選手が拾い上げ前進
⑨ ⑧の選手にIRE選手がタックルする
⑩ ラックが形成され、レフリーは「(IREの)ノット・ロール・アウェー」を宣告、ジェスチャーで示す
⑪ JPN、⑩のラックから出たボールを展開するも継続できず
⑫ レフリーが笛を吹き、IREのペナルティを宣告する
 未だに理解できないのは、
一 レフリーの眼前で生じた④⑤に対して笛を吹かないこと
二 タッチジャッジも見ていたはずなのに、主審に対し何らのアピールもしなかったこと
三 TMOで見れば、明らかなのに、主審に対し何らのアピールもしなかったこと
四 WR編集のテレビ画面において、このシーンはリプレーで流されなかったこと
 ④⑤のプレーが野放しにされれば、ラグビーはラグビーでなくなる。
是非 この一連のシーンをスローで見ていただきたい。
【 Iと HC 
 数日後、IREのシュミットHCが発言したようだ。
BBC日本語ページでは、『日本戦でアイルランドに不利な誤審。「統括団体が認めた」と監督』という見出しで紹介している。(bbc.com/Japanese/49903487
別のサイトでは、According to Schmidt himself, Ireland have received confirmation from World Rugby that Gardner got three of his key penalty decision wrong during the tie in Fukuroi. とある。
    シュミットさんは ARGのレデスマHCに比べれば スマートにメディア対応したように思われる。
【 ガードナーさん 】
この試合の主審はガードナーさん(AUS)。この大会では、FRA/ARG戦に続いて二試合目の笛。
 試合前日、サンケイスポーツ紙上、元プロ審判・平林泰三「タイゾーの笛分析」では『②アイルランド戦主審・ガードナー氏を“斬る”!!』と題して、「スクラムに先入観を持たれるな」と呼びかけるとともに、「21日(FRA/ARG戦)は“失敗”」として「ガードナー氏は選手に規則をしっかり守らせながら、手順に沿った笛を吹く。それが悪い方に出たのが21日のフランス‐アルゼンチン戦だった。スクラムが最後までうまく組めなかった。組み方を細かく説明したり、ときには反則を取ったりしてマネジメントしようとしていたが、言うことを守らない両軍にギブアップ。マネジメントをやめてしまった。」と書かれている。これと同じ状況が生じたのがこの試合。スクラムに関して言うと、①18JPNP ②34IREP(このシーン(だけ)が、その後、何度もテレビで流されている) ③47JPNP があり、この間に、幾たびか両チーム選手に説明したりもしていた。
 試合当日のサンスポ紙上には『最優秀審判ガードナー主審が笛 相性悪いシュミット監督「いい判定を」』との見出しで『今年の欧州6カ国対抗でアイルランドがウェールズに7-25で敗れた一戦も主審をしており、シュミット監督は「彼の判定が味方せず、非常にフラストレーションがたまった」と相性の悪さを口にする。同主審が担当したフランス-アルゼンチン戦でも一部の判定が物議を醸した。WRは今大会の判定について異例の声明を出しており、シュミット監督は「WRから言われたばかりだし、今週こそいい判定を下すと確信している」と期待した。』との記事があった。あらためて、2019316日・ウェールズ・ミレニアムスタジアムのWAL/IRE戦。一方的にIREがペナルティを「取られまくり」見ていても、笛がまったく理解できなかった。前半40分のペナルティを取られた時にはスタンドオフ・セクストンが満面に怒りを表しながらボールを地面に叩きつけるシーンが大写しになっていたのが印象的であった。
 2018年のWRレフリーアワードを受賞したガードナーさん、今大会・予選プールでは、FRA/ARG戦、JPN/IRE戦、WAL/URG戦を吹き、決勝ラウンドでは笛を吹くことなく(準々決勝NZ/IRE戦では線審)終わった。

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