2022年2月12日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 115

2019 W杯・備忘録 115
   〜  六か国対抗 〜
 
 欧州六か国対抗戦がはじまった。最近の六か国対抗は、W杯への「一里塚」になった感がある。どうしても、今・ここの勝負よりも来秋・本番の「完成形」を思い描きながら戦っているであろうし、そういう視点で見てしまう。勝った負けたで一喜一憂するより、次につながるものを探してしまう。
 そうは言っても、Midolによれば、グランドスラム:770万ユーロ、優勝:700万ユーロ、2位:420万ユーロ、3位:300万ユーロ、4位:240万ユーロ、5位:180万ユーロ、6位:120万ユーロの賞金が出されるとのこと。ちなみに、W杯での賞金はゼロ。各協会、コロナ禍で財政逼迫が報道されており、今・ここの戦いが大切にもなる。そして、5位・6位争いも激化しそうである。
 
 どの試合も満員の観客、羨ましい。SCOFRAは、昨秋に続いて、キックオフ前の国歌斉唱、途中から無伴奏に。テレビ越しに見聞きしていても感動もの。屋根付きスタジアム+満員の観客+マスク非着用、新たな文化が芽生えたような気がしてくる。
 いずれの試合もホームチームが勝利した。
 
 6か国対抗のサイトのスタッツを見て興味深いものをいくつかあげてみる。
 
-1 ボール保持率          (%)
 
IRE/WAL
SCO/ENG
FRA/ITA
勝者
   60
   46
   57
敗者
   40
   54
   43
 
-2 地域支配率            (%)
 
IRE/WAL
SCO/ENG
FRA/ITA
勝者
   57
   38
   65
敗者
   43
   62
   35
 
 大差のついたIRE29-7WALFRA37-10ITAは、勝者がボール保持率・地域支配率で上回り、試合を支配していたことが現れている。一方、僅差のSCO20-17ENGは、敗者が上回っている。
 
-3 ペナルティを犯した数
 
IRE/WAL
SCO/ENG
FRA/ITA
勝者
    6
   13
   14
敗者
   14
   10
   10
 
 これまでも書いてきた通り、必ずしもPの数が少ないチームが勝つわけではない。ただし、IREの少なさは特筆すべきものがある。
 
-4 相手陣22m内でのプレー時間  (分・秒)
 
IRE/WAL
SCO/ENG
FRA/ITA
勝者
  5m51s
    54s
  5m22s
敗者
  1m01s
2m37s
  2m03s
 
 スタッツを見ていて、たまに「特異値」に出会うことがある。SCO54s、勝者としては(敗者を含めても)極めて短い。ちなみに、昨秋のJPN欧州遠征、IRE戦(60-5):26sSCO戦(29-20):1m30sであった。昨年の六か国対抗全15試合では、全チーム(敗者も含めて)1分以上となっている。
 WOWOWの中継で解説者も指摘していたが、SCOは一発で取り切ったということか。前半のトライは、マイボールラインアウトから左に展開してセンタークラッシュ、そのラックから逆目に展開、二人目の14が縦にビッグゲイン、21に内返しでトライ。後半のトライは、マイボールラインアウトでのENGの反則で得たFKでスクラムを選択し、左ライン:1022m付近にハイパント・大外11がキャッチして前進ラック・右ラインを作り素早く出し10が大外ゴール前にハイパント。そこで滅多に見られない≒信じられない≒「おバカな」プレーが出た。ENG2がバレーボールのブロックのようにジャンプしてボールを前方に叩き落とした! TMOで確認の上、ペナルティトライ+ENG2にイエローカード。
 ENG2:カーワンディッキー(28歳)、2019杯では6試合出場(決勝ラウンド3試合はいずれも16として後半出場)、2021ブリティッシュ&アイリッシュライオンズRSA遠征では、第1テスト・第2テストマッチで先発出場・第3テストは16として後半出場。現時点での世界有数のフッカーである。そんな選手でも、パニックになるととんでもないプレーをしてしまうということか… この日調子が良かったので60分過ぎまで交代させなかったせいなのか、ENGサイドから見ればいくつかも「たら」「れば」が次々に出てくる。
 一方、SCOとしては用意していたセットピースからのプレーが「ピタッと」嵌まった会心の試合だった気がする。
 ワンプレーだけ切り取って見ていても(おそらくニュースなどの映像は切り取られて編集される⇒その場面だけが人びとの記憶に焼き付けられる)いろいろ考えさせられるが、ゲームの流れに沿っていくと、また別の論点が浮かび上がってくる。
 参考にこの試合の経過表・KSLPFD図を記してみた。どちらも試行錯誤しながら作っているもので、後日、詳しく説明しようと思っている。興味ある方はご覧ください。
 
 第1節を見終わって、上位対決はもちろん楽しみだが、第5WAL/ITAも楽しみになってきた。
 
 
( 参考-1 )
 
20226-1 SCO/ENG経過表
二列目:SSCOの得点経過
三列目:EENGの得点経過
四列目:SPSCOP
五列目:EPENGP
 
前半
3
7
14
15
17
20
23
25
29
32
36
37
39
S
 
7
10
E
 
3
6
SP
 
S
L
R
 
 
 
 
R
R
R
 
 
EP
R
 
 
 
 
R
L
O
 
 
 
R
R
 
後半
44
47
51
52
60
61
65
66
70
73
76
77
S
 
17
20
E
 
9
14
17
SP
F
R
S
 
R
O
 
 
 
 
F
R
EP
 
 
 
 
 
 
F
L
S
R
 
 
 
 興味深いのは、時間帯によって、同じチームがPを連続して取られていることである。
 
( 参考-2 )
リスタート6類型が、順番にどのように起こったかを記したもの。
「分」は得点時間
大文字は勝者 小文字は敗者のボール支配
K:キックオフ
S:スクラム
L:ラインアウト
P:ペナルティ
F:フリーキック
D:ドロップアウト (D*はゴールライン・ドロップアウト)
- :関連するリスタート
 
2022-6-1 SCO/ENG KSLPFD
 
得点
16
17
33
40
k l F l p-L s-f-s-f-P-l L l l-P-l P=pg
K L TG
k D* p-L L-p-L l p D* L P-l D* P=pg
K L P-l p-L p=PG
0- 3
7- 3
7- 6
10- 6
47
52
62
65
71
K S-F l P-l P=pg
K L L s-P-l t
K L l l P P=pg
K L-F-S p*=PT
k L p-L l-F-S-p=PG
k S p-L P-l P-l s
10- 9
10-14
10-17
17-17
20-17
 
 ENG、得点した直後に失点しているのが気になる。また、33分の行に3度の「D*」(ゴールライン・ドロップアウト)、攻めきれなかった・取り切れなかったこともこの試合の敗北につながっている。65分の行「p*」は、ENG2Pでイエローカードが出されている。このプレーでペナルティトライ(7点)がSCOに与えられ同点とされ、その後、10分間シンビンの間に決勝PGを決められている。たしかに、敗因の一つではあるが、試合を通じて、点を取り切れなかったことの方が大きかった気がする。それだけ、SCOのディフェンスが整備されているのか、これからの試合が楽しみだ。
 
令和4212

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