2020年12月19日土曜日

岡島レポート・ 2019 W杯・備忘録 57

     2019 W杯・備忘録 57

          ~  失・T / PG比 ~

    点を取られなければ負けない。点数を競うゲームの永遠の真理である。

 野球では、しばしば完封試合を見かけるが、ラグビーではあまり見かけない。もちろん、実力差が大きいチーム間での試合ではたまにあるが、実力が拮抗している試合では稀である。

 今大会、予選リーグでは、全37試合中4試合(SCO/SAMNZ/CANIRE/RUSSCO/RUS)で完封劇があったが、決勝ラウンド7試合ではなかった。

 過去8回のW杯でも、決勝ラウンドでの完封劇はない。「点を取られない」ことを究極の目的にするものの、次善の策としての「点の取られ方」が問題となる。

  野球では、打撃部門では打率・打点・ホームランを、投手部門では勝ち星・勝率・防御率を競い合う。よりチーム力が求められるラグビーでは、個人表彰は馴染まないと思えるが、チーム全体での攻撃力・防御力を数値で見ていくと興味深いものが浮かび上がる。

  前回の備忘録では攻撃力の数値を見たが、防御力の数値はどうなっているのか?

失点のなかでのトライとPGの比率で見てみることにする。

  2019W杯・決勝ラウンドでの各チームの失トライ・失PG数は、次の通りである。

 

 RSA

 ENG

 NZ

 WAL

 AUS

 IRE

 FRA

 JPN

試合数

  3

  3

  2

  2

  1

  1

  1

  1

 T

  1

  4

  3

  4

  4

  7

  2

  3

 PG

  8

  9

  4

  4

  4

  1

  2

  3

T/PG

  0.125

  0.44

  0.75

  1

  1

  7

  1

  1

  これだけを見ると、勝つためには、① トライを取られない方がいい ② 点を取られるにしても、トライではなくPGで取られた方がましだ、という常識的な原則めいたものが反映しているようだ。

  RSAの強さは、さまざまに語られているが、やはりトライを取られないことなのだろう。それを常に続けていることで、Pを取られても、そのPKで相手チームはトライを取りに行くことを諦め、無難にPGを選択してしまうのかもしれない。

 今大会、RSAは全7試合で失ったトライ数は4(予選ラウンドのNZ2CAN1、準決勝のWAL1)。CANは、66-7と大敗したが、1トライを奪っているのは凄いことなのかもしれない。

  前回の備忘録(T/PG比)と併せて見ると、トライを取る横綱がNZなら、トライを取られない横綱がRSAということか。

  北半球6か国対抗の今大会前の2019年と今大会後の2020年の数値を比較してみた。イタリアサポーターには申し訳ないが、イタリア戦を除外した全10試合での数値を 失トライ数の少ない方から順位付けすると、

順位

2019年(22日~316日)

2020年(21日~111日)

 1

WAL    5T : 2G : 7 PG)

 SCO    (  5T : 5G : 8PG )

 2

IRE   ( 8T : 7G : 9PG)

 ENG    (  8T : 7G : 6PG)

 3

ENG   ( 11T : 7G : 6PG)

 IRE     (  9T : 8G : 8PG)

 4

FRA   ( 14T: 11G : 4PG)

 FRA    (  10T: 9G : 9PG)

 5

SCO   ( 14T: 10G : 5PG)

 WAL    (  11T: 8G : 9PG)

  2019年は、WAL,IREが上位に位置し、この大会後も勝ち星を重ね、防御力の力で、ワールド・ランキング1位に到達している。しかし、W杯本番では、決勝戦に届かなかった。

  W杯後、WALIREのヘッドコーチが代わって迎えた2020年、WALの「凋落」が目を引く。前体制のディフェンス・コーチがフランスに移籍し、大会中に新しいディフェンス・コーチが解任されるなど、混乱が続いている。そして、ワールド・ランキングは、W杯直後の4位(85.02ポイント)から現時点では9位(79.36ポイント)に急降下している。

 一方、SCOの強化は順調に進んでいるように見える。失トライ数が急減したのは素晴らしい。ワールド・ランキングは9位(79.23ポイント)から7位(80.82ポイント)に上昇している。

  次のW杯においても、おそらく、NZRSAのプレースタイルに大きな変化は起こらない・起こりようがない気がする。その二カ国に対して、他の国々がどのようにチームを強化してゆくのか、4分の1の期間は過ぎて行った。

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  先週の日曜日(1213日)、大学選手権3回戦・3試合が行われた。3試合でPGによる得点はゼロ。1試合が完封試合。

 流経大対筑波大は、19-19の同点で、抽選の結果、流経大が準々決勝へ。その流経大の監督が「抽選よりも延長戦を」と語っている。トーナメントの試合での同点の場合、どう優劣をつけるのか、悩ましい問題である。

 この秋のオータム・ネーションズ・カップの1位決定戦、ENG/FRAも同点で延長戦に。こちらは、サドンデスの延長戦(先に点を取った方が、その時点で勝利をものにする)。どんな戦い方をするのか、見物だったが、なんのことはない・相手陣に入って・ペナルティを得ることに終始していた。これはこれで現代ラグビー・北半球ラグビーを如実に表している気がしたが、結果としてFRAが負けたこともあり、なんとなく「しっくり」こなかった。抽選も今一つだが、サドンデスの延長戦もいかがなものか。では、前後半の延長戦で決着をつける、というのが、ある意味、一番まっとうな気もするが、TV放映権料で成立している今日、TV側がそんな「呑気なこと」を許容してくれるのか。柔道五輪代表決定ワンマッチのTV中継途中終了の経緯を見ていると、それも難しいのかな、という気もした。

 万人が納得する決め方はないのかもしれないが、そろそろ「抽選」以外の方法で決める時代なのかもしれない。

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  2023W杯の組み合わせ抽選が1214日(月)に行われた。

 直前に発行されたミディオリンピックでは、FRAにとっての

① 死の組(最悪の組み分け):NZARG+Oceania1+America2

② 理想的な組み合わせ  :WALITAEurope1+最終予選勝者

と書かれていた。

 そして、抽選の結果、FRAは、②の理想的な組み合わせに近く、バンド1のWALNZに入れ替わっただけの結果となった。NZと同じ組ということは、予選プールを勝ち上がれば、決勝ラウンドではNZと決勝までは当たらない。FRAにとっては、ほぼ理想的な組み合わせになった。

 一方、JPNの組み合わせは、①のNZENGに入れ替わったもの。これから3年間、どんな強化をして大会を迎えるのか、楽しみである。

                                                        令和21219 

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