2020年12月12日土曜日

岡島レポート・ 2019 W杯・備忘録 56

     2019 W杯・備忘録 56

        ~   T / PG比  ~

  トライはラグビーの華である。

 もちろん、スクラムだって、ジャッカルだって、タックルだって、欠かせない。好みのシーンは十人十色なのかもしれない。

  得点が入るプレーシーンは、いくつかある。飛び道具的なドロップ・ゴールは見かけなくなってきた。それに代わって、ペナルティ・トライがしばしば見られるようになってきた。

  トライシーンに較べると、PGは地味である。静寂の中で行われる厳かな儀式の感がある。トライが5点・7点であるのに対して、PG3点である。この「3点」の重みをトライと比較して「3点しかない」と捉えるか、トライを取る難易度と比較して「3点を取りに行く」かでは、試合展開が大きく異なってくる。

 トライがアッパーカットなら、PGはボディブローなのか。

  先週末、ミディ―オリンピックのAUS/ARG戦の戦前予想を読んでいたら、AUSのフーパ―主将に対する批判が書かれていた。曰く、① PGを狙うべきところで狙っていない。テストマッチはスーパーラグビーの試合と異なり、点を取るべきところではきちんと点を積み重ねていかねばならない。 ② そもそも彼は身長などで劣っている。同じポジションにAUSには他にも有望選手がいる。 ③ 来春はスーパーラグビーでプレーせず、日本のパナソニックでプレーする。 だから、主将から降ろされるかもしれない。

  フランスリーグで、松島のクレルモンが、124日(金)、ホームでモンペリエに15-21で敗れたが、両チームの得点全てがPGによるものであった。いかにも、フランスの強豪チーム同士の戦いである。

  一方で、126日(日)の早明戦。トライ獲得の応酬になり、両チームで始めてPGを狙ったのが、後半38分の明治。トライを取ることのみが目的化しているかの試合展開であった。

  では、テストマッチでのトライとPGはどんな割合になっているのか。1試合におけるトライ数とPG数をT/PGで数値化し、テストマッチの中の最高峰・W杯決勝ラウンド・7試合、先週終わった南半球3カ国のラグビー・チャンピオンシップ(以下「RCS」)・6試合、北半球8カ国のオータム・ネーションズカップ(以下「ANC」)・6試合で見ると、

  2019W杯   0.8

  2020RCS     0.7

       2020ANC          0.4

となる。(詳細は、後ろの参考に記載してあります。)

  これだけを見ると、南半球のトライ志向・北半球のPG志向とも考えられる。

さらに、各国ごとの数値で見ると、NZのトライ数だけが飛びぬけている。

 短絡的かもしれないが、NZだけが「トライを取りきることによる完勝」を志向している。どんな時でも迷わず「トライを取りに行く」。その決然たる姿勢が世界中のファンを引き付ける魅力の源泉になっている気がする。

 負けたときは、それが裏目に出ている。W杯・準決勝のENG戦、RCSAUS戦、ARG戦。ある意味、同じような負け方をしている。

  一方、NZ以外の国は、「トライを取りきることによる完勝」よりは「ともかく勝利」を志向しているのではないだろうか。だから、臨機応変にPGを狙い、「3点を刻んでいく」ゲーム運びをしている。

  テストマッチと大学ラグビーを同列で論ずるのが適切なのか定かでないが、今年の対抗戦・リーグ戦各チームの数値を見ていると、全てのチームがNZ的志向である気がする。異様なまでに「トライ志向」がみなぎっている。

  日本の誇るべき2試合、2015W杯・対南ア戦、2019W杯・対アイルランド戦、いずれの試合も、対戦相手よりもトライ数は少なかった。

南ア戦のラストプレー、ペナルティでのトライを選択し、ヘスケスのトライに結び付いたことは記憶に焼き付いている。一方で、あの試合、南アの2PGに対して五郎丸の5PGで食らいついていたことを記憶している人はどれぐらいいるのだろうか。

アイルランド戦の田村の4PGを思い返している人はどれぐらいいるのだろうか。

  記憶に残るのは、トライなのか、試合結果なのか。

  明日は、大学選手権の3回戦。決勝までの各試合、どんなラグビーが展開されるのか、愉しみである。

  ( 参考 )

1. 各大会のトライ数、PG

大会

試合数

総数

1試合当たり

   T

   PG

   T

   PG

 T/PG

2019W

   7

   28

   35

   4

   5

   0.8

RCS

   6

   22

   30

   3.7

   5

   0.7

ANC

   6

   15

   43

   2.5

   6.1

   0.4

N

  10

   43

   40

   4.3

   4

   1.1

(注)2019W杯は、決勝ラウンドの7試合をカウントし、3位決定戦は除外した。

ANCは、イタリア戦・ジョージア戦は除外した。

N(欧州6カ国対抗戦)は、イタリア戦を除外した。

 (注2) トライ数・PG数の試合での数値は、以下の各チームの数値の2チーム分である。

トライ数にはペナルティ・トライを、PG数にはドロップ・ゴールを含んでいる。

  意外にも、6Nの数値が高い。おそらく、W杯を終えて、次のW杯を見据えての新たなチームビルディング期にディフェンスよりもアタックを志向した国が多かったことの反映ではないか、と思われる。

  2. 2019W杯決勝ラウンド・各チームの数値

 

RSA

 ENG

 NZ

 WAL

 AUS

 IRE

 FRA

 JPN

  T

  2

  1.7

  4

  1.5

  1

  2

  3

  -

  PG

  4.3

  4

  0.5

  2.5

  3

  -

  -

  1

 T/PG

  0.5

  0.4

  8

  0.6

  0.3

  -

  -

  -

   3. RCS・各チームの数値

 

 NZ

 AUS

 ARG

  T

  4

  1

  0.5

  PG

  1

  3

  3.5

 T/PG

  4

  0.3

  0.1

  NZになりきれないAUS。独自の道を歩むARGか…

 4. ANC・各チームの数値

 

 ENG

 FRA

 IRE

 SCO

 WAL

  T

  1.7

  1

  2

  0.5

  0.5

  PG

  3.7

  4.5

  3.3

  4

  2.5

 T/PG

  0.5

  0.2

  0.6

  0.1

  0.2

  2グループに分かれての対戦、かつ、イタリア戦・ジョージア戦を除いているので、対象試合数が少ない。北半球らしい「手堅く勝つためのPG依存」なのか。

 5. 6N・各チームの数値

 

 ENG

 FRA

 IRE

 SCO

 WAL

  T

  2.25

  3

  2.5

  1

  2

  PG

  2

  1.75

  1.5

  3

  1.75

 T/PG

  1.1

  1.7

  1.7

  0.3

  1.1

  興味深いのは、WAL。堅守の前体制からモデルチェンジしようとしているかに映る。

 6. 関東大学ラグビー対抗戦Aグループ・各チームの数値

 

明治

早稲田

慶応

帝京

筑波

日体

立教

青学

  T

  7.2

  6.4

  6.4

  9.7

  5.3

  1.7

  1.6

  1.7

  PG

  0.3

  0.1

  0.9

  0.4

  0.9

  1.3

  0.7

  0.7

 T/PG

 21.5

 45

  7.5

 22.7

  6.2

  1.3

  2.2

  2.4

  上位チームでは、慶応・筑波がPGも交えて戦っている。

 6. 関東大学ラグビーリーグ戦1部リーグ・各チームの数値

 

東海

流経

日本

法政

中央

大東

関東学

専修

  T

  8.7

  7.3

6.5

  4.7

  2.9

  2.6

  3.1

  1.9

  PG

  0.2

  0.1

  -

  0.1

  0.4

  0.3

  1

  0.3

 T/PG

 52

 51

  -

 33

  6.7

  9

  3.1

  6.5

  日大、6試合(東海との試合はコロナのため不戦勝)でPGゼロ。すごいと言えばすごい。

                                                                                 令和21212 

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