2022年6月4日土曜日

岡島レポート・2019 W杯・備忘録 131

            2019 W杯・備忘録 131

  FRA 
 
 FRA、好調である。2019W杯以降、ガルティエ体制に移行し、順調に進化し続けてきている。昨秋・今年の六か国対抗、無敗である。現時点で、WRランキング2位。来年の自国開催W杯での初優勝も夢ではなくなってきた!? ガルティエ体制になって「負けないラグビー」を追究してきている気がする。
 昨秋・今年の8試合のスタッツ。まず、得失点。
-1 得失点
相手
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
得点
  29
  41
  40
  37
  30
  36
  13
  25
失点
  20
  15
  25
  10
  24
  17
   9
  13
 
 1試合平均の得点:31.38IRE38.75)、失点:16.63IRE11.88
 昨秋、FRAIREは、ともに、NZARGに勝利し、他の一戦はFRA/GEOIRE/JPN、ほぼ同等の対戦相手との8試合であり、比較して見てみるのも一興だろう。
 
-2 ボール保持率(%)
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
  53
  57
  47
  57
  47
  42
  47
  45
相手
  47
  43
  53
  43
  53
  58
  53
  55
 
 1試合平均・FRA45.63IRE57.75
 FRAは「負けないラグビー」≒「ボールを相手に渡すこと」+「ディフェンスで押し込むこと」を追究してきている。その結果、どの試合でもほぼ「ボール保持率」〈「地域支配率」が成立している。
 
-3 Time in Possession
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
1634
1757
1556
2053
1750
1338
1637
1553
相手
1449
1347
1804
1542
1839
1902
1848
1936
 計
3123
3144
3400
3635
3629
3240
3525
3529
 
 1試合平均・FRA1654”、IRE2040”。
 ガルティエは、ゲーム時間の長い=ゲーム密度の濃い試合に対応できる強度の高い事前トレーニングを行ってきている。そうでありながら、FRA、ボールを無闇に回さず、ゲームを殺すことも目指している気がする。ゲーム中の「オン・オフ」のスイッチの入れ方が独特な気がしている。
 
-4 Time in Opposition 22
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
  413
  659
  408
  522
  217
  328
  254
   46
相手
  200
  216
  305
  203
  146
  240
  238
  729
 
 1試合平均・FRA346”、IRE515”。
 ENG戦を除いて、対戦相手よりも長い時間となっている。ENG戦の両チームの数値、実に興味深い。
 
-5 地域獲得率(%)
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
  56
  62
  53
  65
  51
  51
  44
  44
相手
  44
  38
  47
  35
  49
  49
  56
  56
 
 1試合平均・FRA53.25IRE58.63
 ボールを相手に渡して陣地を前進させるFRA、ボールを持って前進していくIRE、どちらが優れているのか…
 
-6 キック比(% Possession Kicked
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
   8.6
   8.1
  12.4
  10.9
  13.1
  13.8
  14.0
  14.0
相手
  12.0
   9.7
   9.8
  14.8
  11.0
   3.4
  12.9
  10.7
 
 1試合平均・FRA11.86IRE7.13
 FRA、実によく蹴る・蹴り合いに持ち込もうとするチームである。おそらく、昨秋ARGGEO戦は、NZ戦を意識して、違った戦略で戦っていた感がある。
 
-7 パス数
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
138
163
  88
156
120
  97
  96
  99
相手
104
  99
132
  93
155
187
156
164
 
 1試合平均・FRA119.63IRE212
 攻撃面では、いろいろな数値がIREと対極にある。
 
-8 オフロード
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
  13
   6
   5
   9
   8
  10
  10
  13
相手
   3
   8
  11
   1
   7
   5
   6
   4
 
 1試合平均・FRA9.25IRE8.88
 NZに勝つために何をすべきか、チームに浸透しての勝利だった。
 
-9 ラック獲得数(Ruck Won
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
  80
  77
  79
  91
  79
  37
  68
  70
相手
  61
  52
  80
  68
  82
  95
  84
  85
 
 1試合平均・FRA72.625IRE109.25
 SCO戦の数値は特異値。意図したもの(≒実験的なもの)だろう。ラックの連取で前進するIREに比べ、意外性に富んでいる気はする。
 
-10 タックル成功率(Tackle Made (%)
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
  94.3
  84.0
  83.8
  93.5
  91.5
  86.0
  94.2
  87.8
相手
  78.8
  84.2
  82.1
  87.3
  89.3
  78.2
  90.5
  85.8
 
 1試合平均・FRA89.39IRE88.66
 強いチーム=勝っているチームは、ディフェンスが安定している。FRAはガルティエ体制でエドワード(WAL・ガットランド体制でのディフェンスコーチ)を招聘したことが効いている。
 
-11 ペナルティ数
 
ARG
GEO
NZ
ITA
IRE
SCO
WAL
ENG
FRA
13(1,0)
7(0,0)
10(0,0)
14(0,0)
7(0,0)
9(0,0)
8(0,0)
9(0,0)
相手
13(1,0)
18(2,0)
11(1,0)
10(0,0)
10(0,0)
12(0,0)
9(0,0)
8(0,0)
(注)()内の最初数字はイエローカード、二番目の数字はレッドカードを出された数。
 
 1試合平均・FRA9.63IRE10.5。カードは、FRA:イエロー1枚、IRE:ゼロ。
 規律が浸透している。
 
French Flair:フランスらしさ」とは何か。
2003W杯時、現FRA協会の会長であるラポルトHC(当時)は「French Flairなんてない!」と言い放っていた。ラポルトが代表HCとして戦ったW杯は20032007。その2003W杯時のキャプテン・ガルティエがHCになり、2007W杯時のキャプテン・イパネスがGMになった現体制、まず行ったのが、コーチングスタッフ全員での過去の試合の振り返り。FRAの強み・弱みの抽出・FRA代表としての模範的な試合展開の構築。おそらくそこで描かれた青写真に沿って順調に進化している。
 それにしても、ラポルトがFRA協会会長選に出馬し、激戦を制して会長に就いたのが2017年。その後、傘下会員に意向調査したのが「2019W杯後、ガットランド・WAL・HC(当時)をフランス代表HCに招聘する」案。この会長提案に対して、「HCはフランス人じゃなきゃダメ!」と過半数が反対しガットランド案は葬られた。もし、ガットランドがHCになっていたならば、どんなフランスラグビーになっていたのやら…
 ガルティエ、イパネスともに現役引退後、FRA有力クラブチームのHCになったが、二人とも芳しい成績を上げられなかった(=首になった)。ガルティエは解説者になり、最近のインタビューでは「2019W杯後は、ラグビーを離れて別の職業に就くことを考えていた」と語っている。
 こういう各人の軌跡、これはフランスらしい気がしている。
 W杯での「フランスらしさ」≒決勝ラウンド:準々決勝・準決勝での番狂わせの勝利+次の試合での順当な敗北⇒優勝できない… 2023W杯 どうなるのか。
 
令和464

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